福岡伸一、加藤諦三、石原加受子がアドバイス!

自分の可能性を広げる「未知への不安」の乗り越え方

人は、未知のことに対して不安や恐怖を感じやすい。しかし、世の中には経験したことがない仕事のほうが圧倒的に多く、知らない仕事の中に「自分に合った仕事」が見つかる可能性は否定できないだろう。不安や恐怖を感じる気持ちもわかるが、それで仕事選びの幅を縮めてしまっているとしたらもったいない。そこで、心理学や生物学のプロフェッショナルに、「未知のことに不安を感じるメカニズムとその対処法」を聞いた。

2012年7月18日

生物学者・福岡伸一氏に聞く

不安・恐怖を感じるメカニズムは?

生物学者
青山学院大学教授
福岡伸一氏
京都大学卒。ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授などを経て現職。「生命とは何か」をわかりやすく解説することに定評があり、テレビやラジオなどでも活躍。『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)、『遺伝子はダメなあなたを愛してる』(朝日新聞出版)など著書多数。

「未知のものに恐怖を感じる」という反応は、生物が本来持っていたものではないと思います。
まず、動物は性成熟すると争いや闘争に重きを置くようになります。しかし、すべての生物には、その前段階として「子どもの期間」が必ずあります。それは、あらゆる未知のことに近づき、吟味するための期間として平等に与えられている大切な時間なのです。子どもの期間は初めて見る面白いもの、珍しいものに好奇心を持ち、それがどういうものなのかを探査することで、個体としての可能性を広げようとします。すべての生物はこの間に知性を育み、スキルを磨き、環境に適応するために学習するわけです。

しかし、こうした子どもの時間が失われていれば、「新しいことは面白いことだ」という発想でものを考えられなくなるでしょう。「早く大人になりなさい」と言う人がいますが、これこそが、生物として本来あるべき姿を変えてしまった一つの原因なのかもしれません。だから、未知のものに恐怖や不安を感じてしまうのではないでしょうか。

未知の分野に挑戦できるようになるためのヒントは?

未知のことを恐れないためには、大人になってからも「子どもの時間」を大切にすることです。レイチェル・カーソン(アメリカの生物学者)の著書のタイトルにもなっている「Sense of Wonder」という言葉をご存知でしょうか。すべての少年・少女に与えられている「新しいものに遭遇した時に感じる驚き」。これを失わないよう、意識して持つことが大事です。自分自身を振り返り、小さいころに何に面白いと感じ、時間を忘れて夢中になっていたのかをいま一度思い出してみてください。

実は、ほぼすべての生物において、食べる、身を守るといった「本能的にできる」と思われていることのほとんどが、成長過程で経験・学習する中でできるようになっているのです。つまり、どの生物も最初は何もできないところから少しずつ身につけていくのです。人間の仕事について考えた場合、「経験がある」といってもほんの数年ではないでしょうか?であれば、あなたの経験は思っている以上に限られたものでしかないということは理解しておくべきです。また、職業についても、学校にいるうちに知り得る仕事の数は限られており、世の中にあらゆる仕事があることを知るのはむしろ社会に出てからのはず。だから、早々に自分の経験を限定し、可能性を閉ざさないほうがいい。「できる/できない」と決めつけないことが、挑戦の幅を広げることにつながると思います。

どの仕事に就くかは、遺伝子が決めていることではありません。むしろ人間は、どんな環境に出会っても適合できるよう可変性を備えており、時間をかけてリソースをどう使っていくかを選びとっていける生物です。ただし、習得して自分のものにするには時間がかかります。天才といわれるプロフェッショナルは、そのことについて平均1万時間努力したと言われているようですが、時間をかけて一生懸命に何かをやったことは体に蓄積され、次にどんな仕事に就いても必ず発揮されるのです。

心理学者・加藤諦三氏に聞く

不安・恐怖を感じるメカニズムは?

心理学者
早稲田大学名誉教授
加藤諦三氏
東京大学教養学部を経て、同大学院社会学研究科修士課程修了。早稲田大学名誉教授のほか、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員、日本精神衛生学会顧問などを務める。2009年に東京都功労者表彰受賞。『「行動できない人」の心理学』(PHP研究所)など著書多数。

人間は、生まれながらにして2つの相反する傾向を持っています。
1つが「成長への傾向」で、「未知の経験をする、新しいことを知る、自分を高める」といった欲求。もう1つが「退行への傾向」で、「無責任な時代に戻りたい(究極的には“母胎に戻りたい”)」という欲求です。誰しも、この矛盾の中で葛藤し続けているのです。自己表現している人は成長欲求が強くなり、退行欲求が弱まります。そしてどんどん未知の世界に挑戦していけるのです。

人間の究極の欲求は「安心感を得たい」ということです。住み慣れた世界では心配はありませんし、強い安心感があります。しかし、未知の世界ではそうはいきません。さらに、人は「不満」と「不安」で選択を求められた場合、自己表現していない人ほど「不満」のほうを選ぶものです。「仕事が認めてもらえない」「仕事量のわりに給料が安い」などの不満と、住み慣れた場所を失う不安を天秤にかけて、不満があっても現状で我慢しようと考える人のほうが多いのです。不幸にしがみついてでも、安心感を求めようとする。だから、大きな不安を伴う未知への挑戦を、人は避けたがるのです。

未知の分野に挑戦できるようになるためのヒントは?

人が不安でなく不満を選択した場合、「そうさせている何か」が過去の出来事の中に必ずあります。そして無意識のうちにそれに従っている場合がほとんどなのです。つまり、成長欲求に従った選択をできなくさせている「原因となっている出来事」を突き止め、それを受け入れることが解決法なのです。
そのための具体的な手段が、「なんで?」と自分に問うことです。「なんであの人とは上手くいかないのか」「なんで今の仕事が嫌なのか」「なんでこの仕事に挑戦できないのか」…そして、その「なんで?」を解決するために、自分の過去を振り返り、人との関係で起こったことを整理してください。「あの時にこんなふうに言われて嫌だった」「よかれと思ってやったら怒られた」「自由に書いた絵が思いがけず褒められた」といったふうに。そうすれば、例えば「よくできたと思ったテストを母親に見せたら、もっと勉強しなさいと怒られた」などのような、自発的な行動を阻害するような出来事が洗い出されるはずです。

ここまでできれば、もう十分。気をつけることは、「結果として挑戦できないのは自分がダメな人間だから」「自分は悪いことをしている」などとは決して考えないこと。「そういう環境で育ってきただけだ」「これでいいんだ」と過去も現実をすべて受けとめてください。大事なのは、これまで見えていなかった無意識を意識化することです。風は見えませんが、木が揺れているのを見れば風の方向がわかります。それと同じです。過去を振り返り、自分自身の中にある「見えない無意識」を知ることができれば、自分を変える大きなエネルギーになります。

心理カウンセラー・石原加受子氏に聞く

不安・恐怖を感じるメカニズムは?

オールイズワン代表
石原加受子氏
独自で生み出した「自分中心心理学」を確立。これまでに3万人以上にカウンセリングを行う。セミナーや講演などで活躍するほか、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」のアドバイザーも務める。『「やっぱり怖くて動けない」がなくなる本』(すばる舎)など著書多数。

人は無意識に、争いを避けようと考えます。未知のことに挑戦する前から、「どうやって問題を起こらないようにするか」「何か問題が起こったら、どうやって解決しようか」をまず考えてしまいがちなんです。でも、経験したことがないから回避法などわからないし、安心できるような解決策を思いつけるはずがありませんよね。だからもっと不安になり、一歩踏み出すのを躊躇してしまうのです。

そもそも、人は未知のことについて考える時に、「結果」に焦点を当てすぎる傾向にあります。「すぐにできるようになりたい」「早く認められたい」とついつい考えていませんか?しかし、現実はなかなかそう上手くはいきません。まだ見ぬ先のことについて想像ばかりしているのは、思考にとらわれ過ぎた状態です。頭で何とか処理しようとすればするほど、不安は増幅し、行動に移せなくなるのです。

未知の分野に挑戦できるようになるためのヒントは?

1つ目は、自分中心で考えることです。
相手のことを気にしすぎる(他者中心になる)と、「相手に合わせて一つ一つ対応しないといけない」と考えるようになってしまいます。つまり、相手の数だけ不安要素が増えるということです。これは対人間関係でも、対仕事でも同じ。そうではなく、常に自分を中心に考えられれば、持っておく基準は「自分」の一つで済みます。自分自身の感覚で相手との距離が決められますから、争いが起きないように距離を保つことができるようになってきます。
そのためには、自分の五感・感覚に焦点を当てられるようにトレーニングしてください。人が恐怖を感じるのはしょうがないことです。その恐怖や不安を打ち消そうとするのではなく、もっと今やっていること、目の前のことに集中し、余計なことを考える時間を減らしてあげるのです。そして、自分がどう感じているのかを自覚して意識するのです。例えば、何かを食べた時に、その味に集中してみてください。おいしいと感じたら、「おいしいと感じている自分」について認識している証拠。そうやって、少しずつ自分の五感・感覚に意識を向けていけば、しだいに「恐怖」よりも「自分はこの仕事をやりたいのか/やりたくないのか」という発想で考えられるようになります。さらに自分を基準にできれば、さまざまな問題への対処能力も自ずとついてくるのです。

2つ目は、物事を長期的に考える癖をつけることです。「すぐにできるようになろう」とは思わないこと。知らない仕事なら、その仕事をしている人に話を聞いて情報収集したり、独学で少しずつ勉強してみるのもいいでしょう。その仕事で使う道具をちょっと触ってみるだけでも十分です。そして、一つのことを知るたびに「よかった」と意識して思うようにしてください。「できた私は素晴らしい」と褒めてあげるんです。その積み重ねが自信となり、不安や恐怖よりも「楽しそう」「やってみたい」と感じられるようになるというわけです。

不安を乗り越えることができれば、転職可能性は広がる

今回は3人の専門家の方々に「恐怖・不安を感じるメカニズム」について話を聞いた。意見は三者三様だが、共通しているのは、自分自身の心がけ・意識の持ち方でいくらでも乗り越えられるということ。不安さえ乗り越えることができれば、その分だけ自分のできることが増え、転職先の可能性も広がるだろう。自分であえて閉ざしてしまうなんて、もったいない。識者のアドバイスを参考に、できることから少しずつ取り組んでみてほしい。

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EDIT&WRITING
志村 江
PHOTO
武島 亨、樋木雅美

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