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あなたの知らない「マネジメント」の奥深き世界
組織を統括し、成果を出していくためには、「牽引力」「決断力」「コミュニケーション力」などのあらゆるスキルが求められる。今回は、あなたのマネジメントスキルをもう一段高めるために、「300もの店舗を誇る商店街」「銀座の人気クラブ」「巨大カラオケパブ」という一風変わった組織を束ねるプロに、マネジメントを行ううえで意識していることや、こだわりについて話をうかがった。あなたのマネジメント力をさらに高めるための参考にしてほしい。
2012年6月13日
「東京一」を誇る大型商店街の理事が語るマネジメントの奥深き世界とは
加盟店約300の東京一長い商店街「戸越銀座商店街」。
組織を束ねるポイントは「否定せず」「第三者視点を大事にする」こと
戸越銀座商店街。東京都品川区にあり、全長およそ1.3キロ、関東有数の長さを誇る有名商店街だ。特に関東地方ではテレビ番組や雑誌記事などでおなじみだろう。戸越銀座商店街は、東京を代表する「消費者の集まるスポット」でもある。今や日本中から商店街振興のお手本として視察者も絶えない同商店街だが、この一帯を取りまとめる立場の広報担当理事・渡辺勝見氏はこう語る。
それぞれが「一国一城の主」。
個々の主張は否定せず、まず受け入れる
戸越銀座商店街振興組合
三部理事・広報担当
渡辺勝見氏
テレビ局に入社しバラエティーや報道番組の制作を手がけた後、自動車メーカーの営業職を経て独立。飲食店やリサイクルショップ、不動産会社などの経営を手がける傍ら、約7年前より戸越銀座商店街振興組合で理事、広報担当を務める。
組合に関わる人々は、多くが加盟店の店主であり一国一城の主。それぞれが主張と利害関係を持った共通性が少ない個人の集まりです。
当然、理事であっても頭ごなしに命令することはできない。常に皆の意見を聞きながらまとめていくしかありません。会議の日程ひとつとっても、ただなんとなく決めようとすれば「うちは月曜が休みだから」だの「いや、日曜日のほうが都合が良い」など、なかなかまとまりません。皆が自分の店のことで一生懸命ですから、利害を超えて動くのはなかなか難しいことなのです。絶対的な上司がいるわけではないので、誰かの「鶴のひと声」で決めることもできません。それに商店街には、長老格もいれば二代目、三代目もいて、世代間での考え方の違いもあります。古くから続く慣習めいた決まりごとや「暗黙のルール」に悩まされることもないとは言えません。
そうした問題を解決するためには、やはり「全員からきちんと話を聞く」ことが大切です。時間がかかったとしても、一通り聞いてからフラットな視点で考えれば、必ず着地点は見つかります。私が経営者の集まりに参加してみて感じたことですが、会社を育て長く生き残っている名経営者と呼ばれる人たちには、よく人の話に耳を傾ける「受け入れ型」の人が多いようです。「まずは人の話を聞く」という余裕が、器の大きさにつながるのでしょう。
そこで私が日々心がけているのは、「否定しない」ことです。他人の考えは必ず一度受け止めます。「違う」や「ダメ」は決して言わない。もっとも、全部を肯定するというわけではありませんが。
あとは「悪口は言わない、マイナス発言はしない」こと。マイナスな言葉は、良い言葉の10倍早く伝染すると私は思っています。言い換えると、1つの悪い言葉を打ち消すには、その10倍の「良い言葉」を発信しなくてはならないというわけですね。商店主ばかりの団体ですから、集まれば「景気が悪い」「政治が悪い」という話や、「あいつはダメだ」と悪口が出ることもあります。でも、意識してそれをやめる。悪い雰囲気が広がらないようにしなくてはいけません。
私の仕事は「商店街の音頭取り」です。もっともすべきことは、皆さんにいい雰囲気を伝染させていくことだと思っています。どんな組織でもまとめる立場の人は元気でいるほうがいい。それこそ、空元気でもいいんですよ。前向きに、明るく、元気よく。それが商店街全体にいい影響を及ぼしていると自負しています。
自分の得意分野と「しがらみのなさ」を活かす。
第三者視点でものを言うことも大切
集団を一つにまとめていくためは、全体で共有できる目標を持つことが大事です。現在の当商店街でいえば、美しい景観の創出と都市防災機能向上の実現を目指した「電線の地中化事業」や「ユビキタス商店街プロジェクト」などがあります。共通の目標を持つことで、意見の出し方も建設的になり、参加意識を持たせやすいのです。
またメンバーの得意分野を活かすことも大切。私はもともと、テレビ番組制作の仕事をしていたので、取材対応やメディアへの売り込みは得意なんです。「マスコミ対応なら渡辺に任せよう」となれば、役割分担がはっきりしますし、物事を決断しやすくなります。
商店街では、年1回、8月の最終日曜日に行う「戸越銀座まつり」や季節ごとの売り出しなど、全体で取り組む大きな催物があります。300店近い加盟店のすべてが関わることになれば、当然、違う意見を持つ人も現れます。そういうときは聞き役に徹しながら、自分の意見を通そうと説得するのではなく、皆が納得できる「もっと良い案」を提案しようと常に心がけています。大勢の人が関わるからこそ冷静に考え、時には「第三者視点」を持つことが大切です。
ちなみに私は戸越銀座の生まれ育ちではなく、昔からのしがらみには縁がありません。だから余計に第三者視点でものが言いやすい立場にいられるのでしょう。第三者的な立場で冷静な意見を投げかける役割の人は、往々にして悪者になりやすいのですが、私の場合はそんなことはありませんね。いろいろと提案はしますが、常に協調をモットーにして事を運んでいるからかもしれません。人間関係作りにおいて意見が違う人がいるのは当然のこと。それを苦労と思わないことが、まとめる仕事を楽しむコツなのかもしれませんね。
この道20年以上。銀座のママに聞くマネジメントの奥深き世界とは
約20人の従業員の結束力を上げるには
「気づく力」を養いながら、お互い切磋琢磨する関係をつくること
不景気だといわれても、きらびやかで華があるのが夜の世界。中でも「銀座」は別格だろう。華やかである一方で、熾烈な競争・独特の戒律が渦巻き、人の入れ替わりは激しいといわれている。そんな世界で、長きに渡って人気店のママを務めるのが、今回ご登場いただく裕子ママだ。彼女が従業員教育において心がけていることとは?
完璧な見本を見せ、「気づく力」を養う。
本人のために「何も言わない」ことも大事
裕子ママ
10代後半に水商売の世界に飛び込む。大阪・新地、東京・銀座で約15年間、ママとして1500人を超える従業員のマネジメントを行ってきた。現在は、飲食店がひしめく銀座の中でも人気店のママとして、約20人のフロアレディを取りまとめる。
水商売の世界では、「気づける人」しか生き残れないと思います。お客様のグラスが空いた、タバコをくわえた、といった瞬間を見逃さないなんていうのは序の口。お店に入ってきて最初に目が合った時の雰囲気から、何を求めて店に来たのかを察し、どんな接し方、どんな会話を選ぶかまで瞬時に計算できなくてはダメ。ただ、そうした周囲への気配りは、教えてられて身につくものではありません。
だから、ママがやって見せるんです。誰にも文句を言わせないくらい、完璧に。それを見て何かを感じ、どうすれば自分もできるのかを考えたり、「ダメ元でもいいからやってみよう」と行動に移せる子には、何を聞かれても教えます。逆に何も聞いてこない子に対しては、その気になるのを待つしかない。危機感を持つまで、あえて何も言わないでおくんです。ひどいかもしれませんが、それが一番、本人のためなんです。
部下を育てるためのコツがあるとしたら、まずは上司である私自身が最上級のお手本でいること。そして、彼らが目の色を変えるのを“ひたすら待つ”ことなんです。
上司とは「目標」であり、同時に「引きずり降ろす対象」。
お互いに切磋琢磨する関係を築くことが大事
勘違いさせないことも大事。例えば、私なりのコミュニケーション手段として、付き合いの長い気心知れた社長なんかには、「わかったから早く飲みな!」なんて冗談半分でため口を使ったりするんです。でも、バカな子はそれをいきなりまねするんですよ。それはさすがにダメ。そんなときは、ヒールで思いっきり足を踏んでやるんですが(笑)。見えるところだけ盗もうとする子がホント多くて、それでは薄っぺらいままだということはきちんと教えないとダメですよね。
私は24時間、いつどんな時でも携帯電話を手放さないようにして、誰からの連絡に対してもすぐに対応できるよう準備しています。寝ている時だって耳の横に携帯を置いて、着信があればすぐに起きて電話をとるし、メールの場合もひと言でも返信します。でも、それを店の子に話すと、「よくそこまでできますね」というんです。そうじゃないんだって(笑)。「私がそこまでやっているんだから、あなたは何をするの?」ということなんですよ。先ほど、「上司は手本であれ」と言いましたが、同時に「目標」であって、「引きずり降ろしてナンボ」の存在。それが部下の特権なんですから。だから私だって「そんな簡単に席は譲らない!」と躍起になる。そういうお互いの切磋琢磨が店の質を上げ、売り上げを伸ばす。人気店は、どこもそんな雰囲気がありますね。
会話の量と店の結束力は比例する。
組織への参加意識が芽生えると、メンバーは力を発揮する
店の子たちとのコミュニケーションがとれていればとれているだけ、売り上げが上がります。これは長年の経験から間違いないですね。コミュニケーションを深めるうえで、「一緒にお酒を飲む」というのは効果的です。私たちみたいな水商売は、仕事中もお酒を飲んでいるわけですから特殊ではありますが、いつだってお酒の力は人と人の距離を縮めます。お酒を飲むと会話が増えて、うっかりホンネが出てしまう。一度でもホンネを言ってしまうと“帰属意識”が高まって、結束力が強くなるんです。逆に言えば、ホンネが言えない「上辺だけの関係」では、1+1は2以上には絶対になりません。仕事の後の飲み会もいいけれど、定期的に社員旅行に行ったり、イベントを企画したり他店との交流を増やすといったことも、上に立つ人間の重要な仕事の一つだと思います。
巨大カラオケパブの敏腕店長に聞くマネジメントの奥深き世界とは
50人の従業員のモチベーションを上げるには
できたことを褒め、「役に立ちたい」気持ちをくすぐる
店長でありながら、50人以上いる従業員の“よき兄貴”として絶大な信頼を集めるのが、銀座の巨大カラオケパブを取りまとめる剛さん。入れ替わりが激しい業界といわれるが、他店に比べて定着率が高く、他店から引き抜きの声が掛かる従業員も多いという。そんな敏腕店長が実践するマネジメント術とは?
反発を生むだけの「トップダウン」はNG。
同じ目線で提案し、できたら褒めてあげる
剛店長
銀座の老舗飲食店でボーイを経験。2007年より系列店のカラオケパブで店長を任される。現在は、100席近い大型店で男女交えた約50人のスタッフのマネジメントを行っている。
僕が従業員教育を行ううえで心がけているのは、あえて「遊び感覚で教える」ということです。この世界は、上に立った人がスゴくて、偉い。だから、あらゆることがトップダウンになりがちです。だけど、今の若い子たちは指示をしても反発するだけ。成長意欲を削ぐだけでなく、お互いの関係構築上、いいことは一つもありません。だから僕はゲーム感覚で「こうしたほうが面白いんじゃない?」「こっちのほうが自分だったら嬉しいよね?」と同じ目線からマメに声を掛けるようにしています。で、うまくできたら褒めます。こちらが素直な気持ちで接すれば、相手は必ず素直に返してくれますし、素直になれれば吸収するスピードが変わるものです。自我と欲望をうまくくすぐって、やる気に変える。ちょっとしたことですが、それだけで人が変わったようにギラギラと輝き出す子がいるんです。そういう姿を見るのは、本当に面白いですね。
意見を求め、どんどん仕事を任せる。
「役に立っている」という意識が見えない力を引き出す
従業員に参加意識を持たせることは大事ですね。例えば、ちょっとしたことでもいいので、「これ、どうやったらもっとよくなると思う?」などと相談して、実際に全部任せちゃうんです。すると、頼まれたほうは「自分の意見が採用された」となってモチベーションが上がるし、もっと提案してやろうと頑張るわけです。それで失敗したとしても、店長の責任として自分が尻を拭えばいいだけのこと。そうやって参加意識を植えつけたり、組織の中で役に立っているんだという気持ちにさせてあげる。人は一度イキイキし出すと、想像を絶するような力を発揮する時があるんですよ。1カ月で売り上げナンバーワンになっちゃったり。生かすも殺すもマネージャーのやり方次第。まずは上に立つ人が、その役割を楽しまないといけないですよね。
上に立つ人は「尊敬される人」でないとダメ。
時には“別の顔”を見せ、一目置かれる存在に
「上に立ってマネジメントする人は、“誰からも尊敬される人”でないといけない」というのが僕の考えです。そのために、まずは一目置かれる存在になろうと意識しています。
効果的なのが、たまに本性を見せること。店の子たちとプライベートでいる時や、どうしようもないお客が来たときなど、従業員以外の誰かに対して納得がいかない場面に遭遇した際に、本気で感情をぶつけ、相手と徹底的に戦うんです。ポイントは、それを全員じゃなくて一人か二人くらいに見せる。すると、部下間の口コミで広がって「店長は、普段はおだやかだけど、本気で怒るとヤバいらしい」というふうになる(笑)。脅すわけでなく、部下のために普段見せない別の顔を見せることで、「ただの面倒見のいい人」ではないということを強烈に印象づけるわけです。実はこの方法を取り入れてからは、「僕も店長みたいになりたい」と言ってもらうことが増えました。ちなみに、逆パターンとしてよくある「悪い見本」というのは、反面教師のおかげで個人の力は伸びさえしても、組織力の向上には絶対につながらないと思います。
成功事例を参考にして、自分に合ったマネジメント手法を見つけよう
商店街組合と水商売の世界では、マネージャーに任される仕事内容も、マネジメントするメンバーの個性や特徴も全く違う。しかし、個々の能力を最大限に活かしながら、組織としての成果を高めていくという点では全く一緒だ。マネジメントの仕方に正解はないからこそ、自分なりの方法を考えたり、異なる分野の成功事例を取り入れてみるなどの工夫が可能ともいえる。今後のキャリアプランを広げるためにも、自分に合ったマネジメント手法を見つける努力をしてみよう。
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- EDIT&WRITING
- 志村 江
- WRITING
- 臼井隆宏
- PHOTO
- 武島 亨