情報収集のプロフェッショナルが教えてくれた

「自分の知らない業界」を知る14の方法

せっかく興味を持った業界があったとしても、「よく知らないから」という理由で転職することを躊躇してはいないだろうか?そうだとしたら、本当にもったいない。そこで今回は、知らない業界について深く知るための方法について紹介する。4人の「情報のプロ」に、情報収集のための心得や、具体的な収集術を聞いた。

2011年9月14日

<ADVISER>

<企業調査のプロ><br>
株式会社帝国データバンク 東京支社<br>
情報部情報取材課長 仲野 実氏

<企業調査のプロ>
株式会社帝国データバンク 東京支社
情報部情報取材課長 仲野 実氏

1983年帝国データバンクに入社。調査部に所属し、企業の信用調査を担当する。1995年に本社情報部に異動。流通業界をメインに、企業倒産取材や企業研究、経済動向取材などを行う。2009年より現職。

<株式と経済のプロ><br>
経済評論家・大正大学教授<br>
杉村富生氏

<株式と経済のプロ>
経済評論家・大正大学教授
杉村富生氏

体系的な視点で集めた経済や株式の情報をわかりやすく紹介することで人気の、実践派の経済評論家。ラジオNIKKEI「ファイナンシャル・サテライト」「視界良好!杉村商店」などのラジオ番組のレギュラー出演でも活躍中。『株の仕組み』『株巧者の投資法』など著書は100冊に及ぶ。

<ネット検索のプロ><br>
株式会社ブルー・バンブー<br>
代表取締役社長 笠井登志男氏

<ネット検索のプロ>
株式会社ブルー・バンブー
代表取締役社長 笠井登志男氏

インターネット・ビジネス・ジャパンを経て2003年に独立。数々の企業のWebプロデュースを行うほか、インターネット・アカデミーでの講師や、「ネット検索の達人」として「ITキング決定戦」(NHK BS)で優勝した経歴を持つ。著書に『何でも見つかる 検索の極意』(技術評論社)。

<転職マーケットのプロ><br>
株式会社リクルート<br>
リクナビNEXT編集長 黒田真行

<転職マーケットのプロ>
株式会社リクルート
リクナビNEXT編集長 黒田真行

1988年リクルート入社。求人情報誌『B-ing』『とらばーゆ』『フロム・エー』各関西版編集長を経て、2006年4月より『リクナビNEXT』編集長に。約20年にわたり、転職・アルバイトなど求人メディアづくりに携わる。

企業調査のプロ・帝国データバンクの情報取材班に聞く!

情報収集する際の心得とは?

世の中は常に動いています。そして、その動き一つで、業界の状況は簡単に左右される場合が多い。ただ業界のことを知るだけでなく、経済や政治などの外的要因についての知識も併せ持っておくことで、より理解が深まるでしょう。常にマクロとミクロといった両方の視点を持つこと、短期/中期/長期といった、違った時間軸で情報を得ることを意識しておけば、会社選びをする際にも役立つはずです。

【情報収集術1】
新聞や雑誌など、紙媒体をくまなくチェックする

誰でも簡単に手に入れられるのが、新聞や本、雑誌などの紙媒体でしょう。基本は「日本経済新聞」ですが、ほかの新聞でも新聞の経済欄を毎日くまなく追っていれば、さまざまな業界の現状や動向が蓄積されるはずです。雑誌であれば、「日経ビジネス」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」「週刊エコノミスト」。よく業界を切り口にして特集を組んでいますので、バックナンバーを探して合わせて読めば、理解が深まるはずです。その際、よく使われる言葉など、キーワードを見つけたら、インターネットで検索したり、関連書籍などに当たってみるのがいいでしょう。

【情報収集術2】
インターネットの口コミサイトを参考にする

私たちは職業柄、ネガティブ情報には敏感です。よって、インターネットの掲示板の口コミなどは頻繁にチェックしています。もちろん、すべてを鵜呑みにするのが危険です。ただ、私の経験上、「火のないところに煙は立たず」ではないですが、あまりにもネガティブな口コミが多い場合は、疑ってもいい場合が多いように感じています。個社情報が多いようなイメージがありますが、業界全体にまつわる書き込みも実は多数あります。個社の情報であっても、その情報をたくさん集めることで、業界が推測できます。リストラ情報、内部告発、支払いの遅れ(入金滞納)…。こういったネガティブ情報を集めてみることは、その業界の事情を知る大きな手がかりになります。

【情報収集術3】
企業が発信する業界情報に注目する

業界について調査し、現状分析や近未来の展望をまとめた資料は、さまざまな企業から発表されています。帝国データバンクでも、毎年の調査結果をまとめた「TDB業界動向」という情報誌を刊行していますし、内容をサイト上で閲覧することができるようになっています。そうした情報を片っ端から見るだけでも全体感がわかりますし、さらに深く調べるための“キーワード”を知る手がかりにもできるはずです。

経済と株式のプロ・杉村富生氏に聞く!

情報収集する際の心得とは?

皆さんが簡単に手に入れられるような身近にある情報だけで、十分に業界研究は可能です。そのとき重要なのは、「体系的に情報を見られるようになること」です。景気など世の中の動きと関連づける、同じ調査や指標を定期的に見比べる、など一つの方向からだけでなく多角的に情報を見るくせをつけましょう。そして、もうひとつ大事なのが、その情報をもとに自分で考えて予測すること。それをしなければ、どれだけたくさんの情報を手に入れたところで、ただ溺れてしまうだけです。

【情報収集術4】
ビジネス情報誌で経営者のインタビュー記事を読む

私が業界や企業を知ろうとする場合、2つの視点からアプローチします。1つが能動的視点。会社が率先して提案している「ビジネスモデル」や「経営者のビジョン」のことです。2つ目が受動的視点。時流に沿って求められる「技術」や「サービス」のことです。いい経営をするにはこの2つの視点を持っていなくてはいけません。これらを知るために有効なのが、「経営者のインタビュー記事を読む」ことなんです。そこにはいろいろな情報が入っています。企業の動きや経営者の考え方から、「その業界で何が求められているか」を読みとることができます。書店に並ぶビジネス誌には、そういった経営者のインタビュー記事がたくさん載っていますので、気になる業界の気になる経営者の言葉に、まずは耳を傾けてみてください。

【情報収集術5】
“株の動き”から、成長業界を知る

その業界が成長しているかどうかを知るためには、成長企業がどれだけあるかを探ってみましょう。その際、株価の動きが参考になります。株価を分析するのは3つの視点が必要です。1つ目は、単純に株価の動きから、その株が強いかどうかを見る「テクニカル・アプローチ」、2つ目は、世の中の動向・需要と関連づけて判断する「ジャッジメンタル・アプローチ」。例えば、サマータイムの導入で居酒屋や習い事、スポーツクラブなどの利用が増えそうだ、と考える視点です。そしてもっとも有効なのが、3番目の視点「ファンダメンタル・アプローチ」です。企業の業績や将来的な展望、計画から分析するものです。この3つの視点を使って成長企業が判断できれば、その業界全体の成長もわかります。

【情報収集術6】
日経産業新聞で“人員採用計画”をチェックする

企業の業績予測や設備投資計画などは後日、修正されることが多いので、発表されている情報を鵜呑みにはできません。しかし、“人員採用計画”は比較的修正されにくい情報だといえます。その意味で、企業や業界を知るための貴重な指針になるといっていいでしょう。
人員採用計画を知る最も簡単な方法は、日本経済新聞を定期的にチェックしておくことです。年に数回、少なくとも春と秋には、誌面で大々的にニュースとして取り上げられます。そうしたら、その日の「日経産業新聞」を購入しましょう。業界ごとに細かいデータがでているので、どういった業界で採用が増えている(減っている)のか、わかります。それを見比べるだけでも、業界そのものの成長性は判断できるはずです。

【情報収集術7】
証券会社の調査レポートを読む

街に出れば、証券会社がたくさんあるでしょう。実は、証券会社では、業界ごとの最新トピックスなどの情報をまとめた週報や月報などを出していて、それを各支店に行けば読むことができるのです。近くの証券会社に出向き、「週報(月報)などの調査レポートを読みたい」と伝えれば、誰でも見せてもらえます。場合によっては、印刷物をくれる場合もあるでしょう。ちなみにこのレポートは、ほとんどが定期購読可能(ほとんどが年間で5000円程度)ですから、読んでみて役立つと思うものがあれば、申し込んでみるのもいいでしょう。

ネット検索のプロ・笠井登志男氏に聞く!

情報収集する際の心得とは?

インターネットの特徴は即時性に優れていることですから、ニュースなどの出来事や、事実を早く知るのには向いています。一方で、何かを深く知ろうと思ったときに、インターネットは実は不向きなのです。やはり新聞や本、雑誌などには情報の深さはかないません。このような媒体特有の得手・不得手を踏まえたうえで、いろいろな媒体を組み合わせて使うこと。すべてをインターネットで知ろうと思ったら、逆に時間がかかったり、見つからない場合も多いということです。

【情報収集術8】
類義語など言葉の組み合わせを工夫する

検索エンジンに調べたい言葉を複数入れて検索するのが、「AND検索」です。普段、皆さんもよく使っている方法だと思います。複数の検索ワードを入れることで情報が絞られていき、より知りたい情報に近づけるので、この方法が検索の基本となります。大事なのは“言葉の選び方”です。最もオススメなのが、類義語をうまく使うこと。例えば「不動産」「医療」などといった調べたい業界名と一緒に、「業界」「市場」「規模」「推移」など、いろんな角度のキーワードを入れ、検索することで、漏れがなく、多角的に業界にまつわる情報がヒットするはずです。
また、「億円」などを一緒に検索すれば、業界の市場規模が具体的な金額でヒットしやすくなります。最新の情報が知りたければ、「2011」などと年号を入れるのが有効です。「20代」「女性」などの属性を限定する言葉を入れれば、より特定の情報を知る手がかりになるでしょう。

【情報収集術9】
マイナス検索をうまく使う

検索ワードの前に「−(半角のマイナス)」をつけて検索すれば、“その言葉を含むサイトは除外”することができます。これを「マイナス検索」といいます。うまく使えば、よりスピーディーに情報収集が可能になります。例えば、検索して出てきた情報の多くは、東京などの大都市のものに偏りがちなので、「−東京」という検索ワードを加えれば、東京以外の地域についての情報が得られやすくなります。ほかにも、あまりメジャーではない職種や業態などについて調べたいときは、あえて主流な言葉を除外することで、より早く欲しい情報に辿りつけるはずです。

【情報収集術10】
サイト検索で公的文書を素早く入手する

役所や政府などが発表している公式文書を見ることで、業界にまつわる客観的な情報を正確に知ることができます。しかし、そういった公的機関のサイトは案外わかりにくいものが多く、欲しい情報になかなか辿りつけなかったりします。その場合に有効なのが、「サイト検索」。例えば「金融業界 売上動向 2011 site:go.jp」「不動産業界 売上動向 2011 site:go.jp」等、業界名に加えて「site:go.jp」というサイトのドメインを入れることで、いち早く公的文書を紹介するサイトに辿り着くことができます。

【情報収集術11】
「文章」で検索する

先ほど、「欲しい情報をイメージしたうえで検索すること」と言いました。ならば、そのイメージした欲しい情報をそのまま検索する方法もアリです。例えば、「○○業界 今後10年で市場規模が拡大」などという形で、自分が想像したことを文章にして入れてみるのです。言葉の選び方にもよりますが、より近いことを紹介したサイトがあればヒットしますし、なければ出てきません。そうやって、言葉だけでなく文章での検索もやってみる価値はあると思います。

転職マーケットのプロ・リクナビNEXT編集長の黒田真行に聞く!

情報収集する際の心得とは?

異業界の情報を仕入れる際に、自分で調べるという方法もありますが、ぜひやっておきたいのが、その業界について知っている誰かに直接聞いて情報を教えてもらうこと。つまり「人に聞く」というやり方です。人に聞く場合、得た情報はその人の『主観』が入ることになります。情報を豊富に集めたら、自分自身のフィルターを通して取捨選択していきましょう。これは、自分でさまざまなツールを使って調べる場合にもいえることです。

【情報収集術12】
「Facebook」の「コネクションサーチ」を使う

志望する業界について詳しい人を直接知っていればいいのですが、なかなかそういうわけにはいかないと思います。その場合はソーシャルネットワークである「Facebook」で探してみましょう。「Facebook」には「コネクションサーチ」という便利な機能があります。例えば同じ大学を卒業した先輩や同窓生を簡単に検索することができます。該当する業界の人を探し出し、話を聞いてみましょう。

【情報収集術13】
転職エージェント会社のキャリアアドバイザーに聞く

転職エージェントに登録して、実際に仕事探しを進めながら、興味のある業界について質問をするという方法もあります。キャリアアドバイザーは転職市場に詳しいプロですから、その業界でのそれぞれの企業の立ち位置や、各社の雰囲気、仕事の進め方の違いや今後の業界展望等も併せて聞きだすことができるでしょう。特定業界の専門エージェントも存在しますので、そういったところではさらに詳しい情報収集が可能です。

【情報収集術14】
気になっている業界の人事に聞く

人事に問い合わせをするという方法もあります。しかしながら、最近の○○業界はどんな状況なのか知らないので教えていただけますか?」などといった漠然とした質問は、忙しい採用担当者にとって迷惑になる可能性も。業界について、事前にある程度の情報を収集したうえで質問するのが望ましいです。業界についてある程度の情報を収集したうえで、例えば「○○業界の営業について聞きたいのですが、新規開拓のウェイトは高いのでしょうか?」というように具体的に問い合わせるのがいいです。聞きたい内容ができるだけ具体的になるように気をつけましょう。方法としては企業ホームページから連絡するのも一つですが、リクナビNEXTに採用情報が掲載されている会社ならば、「問い合わせ」ボタンが設定されている場合もあります。興味のある会社があったら、お問い合わせをしてみることも可能です。

情報収集には「想像力」が大事!

4人の収集術を見ていただくとわかるように、誰でもできる方法だけでたくさんの情報を収集することが可能だ。肝心なのは“情報に対する意識”。ただ漠然と「業界について知りたい」と考えて探すよりも、「業界のこんなことが知りたい」と想像力を働かせながら探したほうが、入手もしやすく、身になりやすいもの。そして、入手した情報を元に自分なりの考察をしてみたり、さらに知りたいことを掘り下げていくことで、より知識も深まるはずだ。新しいことを知れば、その分チャンスもぐっと広がる。ぜひ今回紹介した方法を実践して、可能性を広げるのに役立ててほしい。

リクナビNEXTスカウトを有効活用して
知らなかった業界について見識を深めよう

世の中には情報があふれかえっている。その中でどんな情報をつかみ、自分の成長の糧にするかがとても重要だ。「リクナビNEXTスカウト」に登録すれば、知らない業界からも思わぬスカウトが届くかもしれない。これまでに意識しなかった業界について知るきっかけになるだけでなく、思わぬ魅力を発見し、新たに興味を持つ可能性もある。今回紹介した情報収集術と組み合わせて、新しいステップに踏み出すためのきっかけにしてみよう。

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江
PHOTO
樋木雅美、桑原克典(TFK)
ILLUST
Studio CUBE.

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