世界を舞台に働きたい人のための

「グローバル人材」になるにはガイド

ビジネスにおいてグローバル化が進み、世界を相手に戦うことは、一部の特殊な人たちだけのものではなくなっている昨今。そんな中、「グローバル人材」に注目が集まっている。グローバル人材として活躍できる人の条件は?求められる英語力は?どんなスキルが必要?狙い目の業界や、今後ニーズが高まる職種は?最新トレンドも含めて、専門家に話をうかがった。

2012年1月25日

「グローバル人材」とは、どのような人か?

現在、日本で「グローバル人材」と呼ばれるビジネスパーソンは、勤務地を問わず、日本語以外の言語を使って活躍する人材を指すケースが多い。具体的には、海外市場や外国の文化に精通し、外国語を駆使しながら海外との高度な交渉とマネジメントを行える人材、といえるかもしれない。
では、その中でも上図の赤色部分、日本に進出している外資系企業については、実際にどのような人材ニーズが発生しているのか。どの程度の英語力が必要で、求められるスキルはどのようなものなのか。外資系企業に特化した人材紹介を行うオプティアパートナーズに「業界動向や最新トレンド」を、海外を舞台に活躍する元・日本コカ・コーラ副社長の射場瞬氏には、「活躍できる人材の条件」を聞いたので、紹介していこう。

人材紹介会社・オプティアパートナーズ代表のマックス ナイト氏に聞く
日本進出外資系企業の業界動向と最新トレンド

「IT」「消費材」「自動車」の分野に注目

オプティアパートナーズ株式会社 代表取締役
マックス ナイト
オーストラリア出身。1992年より東京在住。1997年以降は金融サービス業界でのリクルーティングに携わり、数多くのグローバル企業や日本企業の採用活動をサポートする。2002年5月、取締役のニック・ジャマンティスとオプティアパートナーズ設立。会社全体の運営に加え、金融サービス業界や、プライベート・エクイティ投資など、不動産関連に重点を置いた投資銀行部門全般の人材紹介を担当。

現在、日本には約2500社の外資系企業があるといわれています。
その中で求人件数が比較的安定しているのが、アメリカやヨーロッパからの進出企業に多い医薬品や食品など生活用品を扱う消費材メーカーです。景気に左右されにくく、生活に密着しているために需要と供給のバランスが大きく変化しないのが特徴です。一方で、リーマンショックや欧州金融危機の影響が直撃したのが、アメリカやヨーロッパ、アジアから進出している不動産や金融業界です。同じく影響を受けたドイツに多い自動車業界や、フランス・イタリアの高級ファッションブランドメーカーなどは、ここにきて回復傾向にあります。
求人ニーズが最も多く、今後も増えていく可能性が高いのがITです。シリコンバレーに代表されるように、特にアメリカが強いところですが、「スマートフォン」や「クラウドコンピューティング」の分野では、世界的に多くの企業が成長し、人材採用も活発化しています。

「ITエンジニア」「マーケティング」職種は人材ニーズが高い

スマートフォンに関連する企業、例えばベースステーションを作っている設備メーカーや、端末やアプリケーション、各種サービス、セキュリティなどにまつわる周辺ビジネスが全般的に好調で、人材ニーズが高まっています。具体的には、スマートフォンに搭載されるソフトウェアの開発エンジニアや、そうしたソフトウェアを導入するためのコンサルタント、PMです。また、ゲームやSNSなどのアプリケーション開発エンジニアといった職種も注目されています。
また、「クラウドコンピューティング」は今後確実に伸びていく分野です。そのなかでも営業職(プリセールスエンジニア、ポストセールスエンジニア)の需要が高くなっています。また、大規模案件に対応できるソリューションアーキテクトのニーズも高まっています。
消費材メーカーでは、マーケティングやブランドマネジメント、ロジスティクスの知識がある人材のニーズは常に高くなっています。ロジスティクスの知識という点では、Eコマースの分野でもニーズが多数発生しています。特にSEMコンサルタントやSCM(サプライチェーンマネジメント)、あとはSNSを使ったオンラインマーケティングの知識がある人材には注目が集まっています。

面接ではどのような観点をチェックされているのか?

即戦力を求める外資系企業への転職のハードルは低くはありません。転職を考えたら、まずは自分の専門を自覚し、アピールできることは何なのかをよく整理しておくことが大事です。そして今いる環境で、語学力や実績を磨き、人脈をつくっておくことが大切です。実際に面接ではどのような観点がチェックされているのでしょうか。

■語学力
どの職種にも必須となるのが英語力です。消費材などのメーカーは、市場が海外に向いているため、クライアントとのやりとりのためには高度な英語力が求められます。物流関連も、社内調整や海外の物流会社との商談の際は専門用語を知っていないといけません。特に今は中国や台湾などにアウトソーシングする企業が増えたため、SCMなどは英語での取引ができないとサプライチェーンに指示ができません。
クライアントが日本人だとしても、上司が外国人で日本語が話せなかったり、本社と定期的なやりとりが発生する場合も多く、英語力は採用の際の大前提となります。TOEICの点数などの基準を設ける場合もありますが、ほとんどの会社が面接(英語インタビュー)の中でスキルを評価します。例えば、営業職では「今、売っている商品を英語で私にプレゼンしてください」といった質問は必ずされるでしょう。プランニングなら「あなたがこの会社を経営するならどんな方法で取り組むか」といったふうに。どの職種でも「前職での仕事」と「入社後の仕事」について、英語で答えさせることによって、英語力を判断します。

■資格
プランニングやマーケティングについては、過去の実績も大事ですが、MBAや証券アナリストといった資格の有無が大事です。特にMBAについては、取得した大学も見られます。アメリカのアイビーリーグや、ロンドン・ビジネス・スクール、INSEADなどのヨーロッパのビジネススクールなど名門大学であると、やはり面接官の注目度が高くなります。
一方で、人事や経理、法務などの職種は、基本的なスキルが身についている場合、業界未経験でも採用となる場合があります。いずれにしても、外資系の採用は即戦力人材であることが基本ですから、前職での実績はとても重要です。「ポテンシャル採用」や、研修しながら育てていくなどの発想は外資系企業にはないと考えていいでしょう。

■異文化の受容性
スキル以外の面で気にするのが、「文化を受け入れられるかどうか」という問題です。「個人主義」などと形容されるのが外資系企業の特徴。例えば、長く日本の大手企業で働いていた人が、シリコンバレーの中小企業に転職する場合、社風や環境があまりに違いすぎて文化になじめないことが多いのです。いくらスキルや実績がマッチしても、働く企業の出身国のカルチャーが理解できていないと採用には至りません。そのためには、海外で生活して文化を知っておくといいでしょう。今の勤務先に海外支社があれば、手を挙げて働きに行ってみるのも有効かもしれませんね。

■人脈
そして、最後にものをいうのが、実は「人脈」なのです。特に営業職に顕著ですが、「○○という会社に知り合いがいて、商談が持ち込める」といったルートを持っていることは、貴重なアピールになります。というのも、外資系企業は日本国内であまり人脈を作れていない場合が多く、その部分を転職者に期待しているからです。

グローバルビジネスの最前線で活躍する射場瞬氏に聞く
「グローバル人材」として活躍するための条件・身につけたいスキル

世界を相手に、自分は何をしたいのかを考えることが大事

株式会社IBAカンパニー
代表取締役 射場 瞬氏
米国系企業で約20年間、一貫してグローバルマーケットでのブランドマネジメントおよびマーケティングを手がける。フィラ・ジャパン株式会社の日本代表、日本コカ・コーラ株式会社の副社長などを歴任した後、2010年にIBAカンパニー設立。北米、アジア地域への進出を支援するグローバル・ブランド・マネジメント事業を展開している。

このところ、20代や30代前半の方から「どうすればグローバル人材になれますか」という相談を受けることがよくあり、彼らの切実な危機意識を感じています。彼らに私が最初に聞くのは、「どんな分野でグローバル人材になりたいの?」ということ。人事やマーケティング、メーカーや商社など、職種や業界によって必要なスキルや知識は異なります。求められる英語力や用語も違ってくる。まず自分は何をしたいのかを決め、希望に近い分野でグローバルに通用する専門知識や語学の能力を持つことが効果的だと思います。
そのときには、好きなことや自分に向いていることを選ぶことが大切です。グローバルに働くのは、厳しい面もたくさんあります。でも、当たり前のようですが、好きなことなら頑張れますよね。これなら長く続けられるというものは何か。考える時間をつくってみてください。

グローバル人材に求められる4つのスキル

グローバル人材に必要なスキルは次の4つ──「コミュニケーション能力」と「自分で問題の解決方法を考える力」、「人を巻き込んで解決する力」、そして「想定外の事態に対応できる力」かなと思います。

■コミュニケーション能力
異文化の人たちとチームを組み、プロジェクトの進行に必要な指示を出し、チームを円滑に運営する力。メンバーから信頼されるといったことも重要な能力です。「コミュニケーション能力」の一つとして、英語力は習得しなければならない重要なスキルですが、ここでも大切になるのは「どんな英語を勉強するのか」ということ。自分の仕事やプロジェクトに使える英語力があればいいわけで、オールラウンドに話せることを目指す必要はありません。例えば、私はマーケティングに関しては豊富な語彙があり、専門的な会話もできますが、友人が「ダイヤモンドを買った」と宝石の詳しい話を始めるともうわからない(笑)。もちろん話せるテーマは広いほうがいいのですが、まずは自分の専門分野で周囲から信頼されるだけの英語力を持つことが大切です。

■自分で問題の解決方法を考える力
そもそもグローバル人材とはどんな人なのか。私が考える定義は、「未知の問題に対して自分の頭で考え、周囲の人と一緒に解決していける人」というものです。グローバルビジネスには、正解がないことが多々あります。例えば、中国経済や欧州の金融危機が5年後どうなっているかなんて誰にもわからない。世界も経済もルールも劇的に変わっていく中で、答えがわからない問題に直面し、解決方法を見出していく。それがグローバルに働くということだと思います。
「自分で問題の解決方法を考える力」とは、まさに前述した答えのない場面で求められる力のこと。具体的には、分析力や戦略的思考力、論理的思考力、情報収集力など、さまざまな能力が含まれますが。

■人を巻き込んで解決する力
情熱を持ってチームを動かし、文化や習慣の違いを乗り越えてメンバーをまとめていく力のこと。例えば、急に僻地に派遣されたとして、未知の国で現地の人たちを動かし、未知の課題を解決していけるか。マニュアルや正しいやり方がない中で、それができるのがグローバル人材だと思います。こうした力を得るために、アメリカでは「自分が上司の上司ならどうするかを常に考えろ」と言われます。この意識があるかないかで、力の差が大きく開く。日本の会社でもこの姿勢で仕事に取り組めば、身につけた力は必ず世界で通用します。

■想定外の事態に対応できる力
世界を相手に働くということは、文化や言葉、習慣が違う人たちと仕事をするわけですから、想定外のことが次々と起こります。現地の工場に製造を依頼して、納品日に連絡したらまだ手をつけてもいない。そんな経験を私も何度もしました(笑)。そんなときもヘコまない。むしろ常識の違いを面白がる。そして、次の一手を即座に考える反射神経が必要なのです。
私のかつての同僚は、海外出張がない時期が続くと「反射神経を鍛えてくる」と、休暇を利用して僻地を訪れていました。そうした旅行もお勧めですし、毎日の仕事でも、価値観が合わない人を苦手だと思わずに、考えの違いを受け入れる努力をする。そんなこともいいトレーニングになります。実は日本ほど何事もきっちりと動く国は稀で、日本の常識は世界の非常識。それがわかると、どんなハプニングに出会っても笑い飛ばせるようになる。これができれば、世界は広くて、多様で、本当に面白い。ぜひ存分に楽しんでください。

グローバルに働くチャンスは拡大している

この十数年でインターネットが一気に普及し、日本においても国際化が急速に進んだことで、海外の情報が身近になったり、英語を学ぶ人は確実に増えた。「世界を相手にビジネスをしたい」と考える人にとっては、今の日本にはさまざまなチャンスがあるといえそうだ。世界の動きを意識しながら、自分自身を高められる人こそが、チャンスをものにできるのかもしれない。

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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村 江、大崎直美
PHOTO
平山 諭、樋木雅美

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