行ってみたからわかった、世界と日本のギャップの乗り越え方

海外赴任経験者300人が語る「日本で働くリスク」

グローバル化が進むにつれ、若手ビジネスパーソンの中で「日本国内だけでのビジネス経験では生き残っていけないのでは?」と危惧する人が増えているようだ。では、現在の日本企業、および日本で働くビジネスパーソンは、グローバルに成長し続けている外国企業や海外ビジネスパーソンに比べ、どんな課題を抱えているのだろうか?海外赴任を経験し、日本と海外の違いを目の当たりにしたビジネスパーソン300人の声から、探ってみた。

2012年12月26日

アンケート調査概要

調査方法:インターネット上で実施(楽天リサーチ株式会社)
実施期間:2012年12月14日(金)〜17日(月)
調査対象:この5年以内に、半年以上の海外赴任経験がある20代〜30代のビジネスパーソン
調査人数:300人

【海外企業との違い】「意思決定のスピード」が遅いと感じている人が57.3%

半年以上の海外赴任経験者に、「赴任した国で成長を続けている企業と、成長が停滞している日本の企業を比較して、最も異なると思う点を3つ教えてください」と質問したところ、半数以上の57.3%の人が「意思決定のスピード」と回答した。
●「日本企業は意思決定するまでのプロセスが多すぎる。現地では決める内容と決める人がはっきりしていて、スピードが速く、人の異動や業務の入れ替えが必要に応じて柔軟に行われている」(素材・医薬品系メーカー/営業、代理店営業、渉外/赴任国メキシコ)
●「日本企業では、個人レベルで動きにくいことがある.それが組織全体としての意思決定の速度を低下させているように思う」(その他/研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理/赴任国ベルギー)
●「任地の現地法人に権限が与えられず、何事においても日本本社の承認が必要で、決定が遅い」(電気・電子・機械系メーカー/品質管理、製品評価、品質保証、生産管理/赴任国タイ)
●「決定ごとのスピードの違いには驚かされる。現地企業の決定の速さは、『もう少し検討しては?』と思ってしまうくらい。権限がある人は責任も取るというスタンスが確立されている」(電気・電子・機械系メーカー/回路・システム設計/赴任国アメリカ)
●「日本では何度も会議を重ね慎重に意思判断・決定をするため、何事にもとても時間がかかる。その間に状況に変化が生じた場合、一から会議をし直さなければならず、臨機応変に対応し切れていない」(サービス系/事務、アシスタント/赴任国中国)
●「戦術がまとまり上位者の承認が得られないと、次のステップに進めない日本企業と違い、動きながら状況に応じて、対応を柔軟に変化させていくため、動きが非常に早い」(素材・医薬品系メーカー/営業、代理店営業、渉外/赴任国アメリカ)
このように、現地企業のスピード感を目の当たりにして、自身が所属する組織の決定スピードとの違いに愕然としたり焦燥感を募らせたという声は、非常に多かった。中には「絶対に必要な物を購入するのに10秒で決める会社と2日間で決める会社では、後者は2日分の余分な工数もかかり、他社より行動が2日遅れる。これが積み重なることで、企業は停滞していくのではないか」(電気・電子・機械系メーカー/財務、会計、経理/赴任国中国)と分析し、日本企業の将来を憂う声もあった。

続いて多かった意見は、「仕事の進め方の効率」の33.7%。
●「日本のメーカーは、現地の協力工場に何度も試作品を作らせるので、相手から『本当に契約をする気があるのか』と疑問視されるケースが多い。試作品はせいぜい1〜2回程度で判断し、まず取引契約をかわしてから修正を加えていくほうが効率がいい。現地に決裁権限が少なく、リスクテイクができない企業ほど、効率面で苦労をしている」(流通・小売系/管理職、エグゼクティブ/赴任国バングラディシュ)
●「現地企業は仕事の範囲が明確であり、日本のようにだらだらと残業をする人はいない」(電気・電子・機械系メーカー/企画、マーケティング、宣伝、MD、バイヤー/赴任国イギリス)
●「意思決定するために複雑な手続きが必要な日本企業と違って、現地企業は手続きがシンプルで早い」(電気・電子・機械系メーカー/機械・機構設計、金型設計/赴任国韓国)
●「現地の企業はいろいろなグレードの人をいろいろな給与で雇うことで、役割分担をしっかり行い、仕事を効率的に進められている。一方、日本企業は画一的な雇用をしていて、みんな同じような仕事をしており、専門性が育ちにくいと感じる」(素材・医薬品系メーカー/医薬品関連職/赴任国アメリカ)
以上の声に代表されるように、関係各所すべての確認を取らないと次のステップに進めなかったり、仕事の範囲が不明瞭で個人が効率的に仕事を進めにくいなど、日本企業ならではの体制を指摘する意見が目立った。

僅差で3番目となったのは、「権限と責任の所在の明確さ」32.0%。
●「責任の所在があいまいで、何をするにも時間がかかる日本と違い、私が赴任していたアメリカでは個人の責任の範囲で即決ができるので、日本は何をしているんだ!?と怒りを感じることが多かった」(その他/総務、人事、法務、知財、広報、IR/赴任国アメリカ)
●「日本方式の会社経営は海外で通用しない事がよくわかった。現場の事情をよく理解し、現場の判断を大事にしないと、海外事業はうまく行かない」(素材・医薬品系メーカー/営業、代理店営業、渉外/赴任国中国)
●「国が違えば、突発的な事態に遭遇することも多い。現地への権限と責任を委譲する柔軟性が必要だと感じる場面が多かった」(その他/公務員、団体職員/赴任国アメリカ、シンガポール、インドなど7カ国)
●「現地企業は、各担当者に責任権限がはっきり与えられているので、何事も迅速に判断できるのだと思う」(サービス系/企画、マーケティング、宣伝、MD、バイヤー/赴任国ドイツ)
●「実力主義で新人社員でも権限を持たされることもあり、各自がリーダーという意識を持って動いている」(マスコミ系/教育、インストラクター、通訳、翻訳/赴任国イギリス、韓国)
以上の声のように、前掲の「仕事の進め方の効率」を挙げる声にも通じるものがあるが、日本本社から権限や責任を委譲されず、赴任地で焦燥した経験を語る人が多かった。

なお、「優秀な人材の積極的な登用」(26.7%)、「人材の入れ替えの柔軟性」(20.0%)、「個人の力を活かす最適な人材配置」(19.3%)など、人材登用や配置に関する違いを挙げる声も目立った。
●「日本企業では、人事採用や人事評価が今までの慣習にしばられ過ぎている。多民族国家では、慣習にしばられることを問題視して、排除しようという動きも強い」(その他/研究、特許、テクニカルマーケティング/赴任国カナダ)
●「現地文化を取り入れず、日本流をそのまま現地人にやらせようとしても、うまくいかない。いちいち本社の意向を聞かず、思い切って現地人に任せれば、スピードも上がるのに」(電気・電子・機械系メーカー/営業、代理店営業、渉外/赴任国中国)
●「現地の企業は、必要に応じて必要な人材を積極投入することで、プロジェクトの成功率を高めている」(素材・医薬品系メーカー/研究、特許、テクニカルマーケティング/ベルギー)
●「若手にチャレンジングな仕事を与えないため、若手が育たない」(その他/公務員、団体職員/赴任国アメリカ)
など、日本企業特有の年功序列や上下関係、柔軟性に欠ける人事戦略などが、海外ビジネスの成長を阻害しているとの意見が多かった。

【世界で活躍するビジネスパーソンとの違い】「自己主張が足りない」が37.3%

海外赴任経験者の声をもとに、「日本人ビジネスパーソンの課題」についても洗い出してみよう。「世界で活躍するビジネスパーソンと、日本で働くビジネスパーソンとを比較して、最も異なると思う点を3つ教えてください」と質問したところ、最も多かった答えは「意見発信力(自己主張)」(37.3%)という結果になった。
●「外国人は、正しかろうが間違っていようが思ったことはすぐに主張して、お互いの意見を交換するため、すぐにお互いの考え方を吸収できる。これが新たな視点を得られるきっかけになることも多いため、見習うべきだと思う」(素材・医薬品系メーカー/営業、代理店営業、渉外/赴任国アメリカ)
●「現地でのスタッフトレーニングなどに参加したが、皆自分なりの意見を発信しており、一方通行のトレーニングは一つもなかった。日本のやり方とは全く異なっており、活気を感じた」(IT・通信系/Web・オープン系システム開発/赴任国インド)
●「海外で活躍するには、自分の意見を積極的に述べて、常に会社のことを考えて行動することが重要。そうしなければ、そもそも現地スタッフがついてこない」(電気・電子・機械系メーカー/総務、人事、法務、知財、広報、IR/赴任国中国)
●「日本人は技術力では世界一流だが、自己アピール能力、討論能力、そして英語力において、外国人に比べて劣っていると感じる」(その他/研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理/赴任国アメリカ)
●「日本人は、組織の中の自分の立ち位置を気にし過ぎて、発言をためらう傾向がある」(流通・小売系/公務員、団体職員/赴任国アメリカ)
以上のように、海外で外国人ビジネスパーソンとコミュニケーションを取ったり、ビジネス交渉する中で、自己主張スキルの差に気づかされた人が多く、そのスタイルを見直すべきとする声も聞かれた。

2番目に多かったのが、「上昇志向(キャリアアップ)」(34.0%)。
●「会社内でのポジションだけでなく、その後の自分のキャリア形成のために常に貪欲。『自分自身が一企業』というくらいに意識が高い」(マスコミ系/教育、インストラクター、通訳、翻訳/赴任国イギリス、韓国)
●「自分と組織の目標を明確に持ち、そのためにどうするべきかを常に考えて行動している。目の前の業務に忙殺されている日本人とは違うと感じる」(素材・医薬品系メーカー/資材、購買、貿易、物流、店舗開発/赴任国アメリカ)
●「今ある状況に満足せず、常に上を求めていく姿勢は見習いたい」(電気・電子・機械系メーカー/サービスエンジニア/赴任国ドイツ)
このように、仕事における成果や、自身のキャリアの目標を常に明確に決めて、それに向かって突き進むパワーのすごさを指摘する意見が多く見られた。「キャリア、スキルの向上に貪欲だからこそ、社内での自己主張が激しい」(金融・保険系/営業、代理店営業、渉外/赴任国中国)など、「意見発信力(自己主張)」「上昇志向(キャリアアップ)」の2つが連動しているため、日本人との大きな差を生んでいるとする指摘もあった。

3位には、「海外企業と日本企業との違い」でトップに挙がった、「意思決定のスピード」(33.0%)が入った。日本企業に対する意見とほぼ同様のコメントが集まったが、「企業自体の体制もあるが、担当者レベルでも意思決定が速いと感じた。条件の抽出や決定を下すスピードが、日本人とは全く異なる」(電気・電子・機械系メーカー/財務、会計、経理/赴任国アメリカ)などの声があった。
また、24.0%の支持を集めた「異文化受容性」に関しては、外国人と日本人ビジネスパーソンの違いについて、たくさんの意見が集まった。
●「国や人種の枠を超えた仕事に慣れており、日本1国しか知らない日本人ビジネスパーソンとは考え方などが大きく違う。今後吸収が必要だと思う」(IT・通信系/Web・オープン系システム開発/赴任国イギリス)
●「世界で活躍しているビジネスパーソンは、異文化摩擦に対するストレスに強く、キャパシティーが広いように思う」(サービス系/事務、アシスタント/赴任国中国)
●「日本が島国であるためか、日本人はどうしても保守的であり、大陸続きのほかの国と違って相手の文化を受け入れる感性に長けているとはいえない。海外での事業戦略を立てるには、今までとはがらりと視点を変え、視野を広げ、相手国を理解し、受容することが求められる。その上で、対立ではなく協調しながら、ビジネスを推し進める姿勢。これがビジネスにも大きく影響するのは間違いない」(サービス系/公務員、団体職員/赴任国アメリカ、フランス、台湾など5カ国)
これらに代表されるように、「日本で成功したから、海外でも通じる」と楽観的に捉える日本企業の多さに触れ、「海外で勝ち抜くには、現地の文化や風土、国民性を理解する必要性」を痛感した赴任者ならではの、リアルな生声が集まった。

なお、「異文化受容性」と同じく24.0%の支持を集めた「対人コミュニケーション力」についても、「日本で求められる、ロジカルシンキングや情報収集力などはもちろん必要だが、そういった能力は現地採用スタッフのスキルに求めたほうが効率的。それよりもマネジメント力やコミュニケーション能力などといった、『日本とは常識の異なる現場での対応力』が求められる」(素材・医薬品系メーカー/化粧品、食品、香料関連職/赴任国中国)、「語学を習得して、現地スタッフとのコミュニケーションをしっかり図るなど、努力を続ける日本人が多い会社は成功していると感じる」(電気・電子・機械系メーカー/総務、人事、法務、知財、広報、IR/赴任国中国)、「世界市場で活躍する人を見ていると、人間力が素晴らしい。その人間力の源は、対人コミュニケーション力ではないかと思う」(素材・医薬品系メーカー/総務、人事、法務、知財、広報、IR/赴任国アメリカ)など、対人コミュニケーション力は異文化圏で勝ち抜くための必須スキルであるとする声が多く見られた。

海外赴任経験者の「英語力」は?

今回のアンケートでは、海外赴任を経験したからこそ見えてきた日本企業、日本人ビジネスパーソンの「課題」だけではなく、自身の英語力に関する設問も設けた。
「TOEICスコア」は、800点代が最も多いという結果に。次いで700点台が多く、「900点以上」と答えた人も13.7%に上った。
また、「英語による実務で、実際に行っていること、できること」については、最も多かったのは「メール交換」の80.7%だが、半数以上の56.0%が「英語でプレゼンテーションができる、行っている」と回答。ビジネスにおける交渉も30.3%が「できる、行っている」と答えている。

【世界で活躍できる人材になるために、今できること】
「日本の強み」を理解しながら、「課題」を埋める努力をしよう

ここまで、日本企業および日本人ビジネスパーソンの「課題」を挙げてきたが、海外赴任経験者からは「海外に行ったからこそわかった、日本の強み」を挙げる声も目立った。
●「日本企業の着実性や、技術に対するこだわりは負けていない」(その他/経営企画、事業統括、新規事業開発/赴任国ガーナ)
●「日本人の情報分析力はすごい」(その他/公務員、団体職員/赴任国ロシア)
●「私が赴任したイギリスは日本人ほど勤勉ではない印象。イギリスのビジネスパーソンは、与えられた仕事の最低限をこなせば良しと考えるが、日本のビジネスパーソンは皆、与えられた仕事を完璧に、その上も目指せなければならないと考えている」(IT・通信系/テレマーケティング、カスタマーサービス/赴任国イギリス)
●「世界では『主張した者が勝ち』というところがあり、自分のことしか考えてない人が多いが、日本企業では、よい意味で周囲の人や環境のこともよく考えてから物事が決められていく」(その他/教育、インストラクター、通訳、翻訳/赴任国韓国)
●「決められた目標を達成する能力は日本人にもある。むしろすごい。でも、大きな目標を自分自身で立てることができず、ビジョンがあってもそれをおおっぴらにしないのが残念」(その他/その他職種/赴任国アメリカ)

このように、日本企業、日本人ビジネスパーソンならではの「着実性」「勤勉性」「目標達成能力」などは、他国に対して誇れるものだ。これらの「強み」は活かしながらも、上記に挙がった「課題」を埋める努力をすることが、日本はもちろん、世界でも活躍できるビジネスパーソンになるための第一歩といえる。
「旧態依然とした日本企業の中では限界がある」という意見もあるかもしれないが、組織の中でも自分自身を鍛える方法はあるはずだ。上記で挙がった「課題」から鑑みれば、例えば「アイディアが浮かんだら、できるだけ発信してみる」「正しいと思ったことは思い切って主張する」「会社に与えられた目標だけでなく、自分自身でも目標を決めて突き進んでみる」「自社と関わりがある国の文化や言語を勉強したり、現地の人とコミュニケーションを取ってみる」などが挙げられるだろう。まずは何らかの、今までできなかったこと、してこなかったことに挑戦して、第一歩を踏み出してみてほしい。

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EDIT&WRITING
伊藤理子

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