2000年以降に設立された企業から読む

「10年以上生き残る会社」の条件

以前から、企業が設立・創業してから何年間事業を継続できるかという「企業の生存率」が話題になっているが、近年、企業を取り巻く環境の目まぐるしい変化を受け、「企業の生存率が下がってきているのでは?」との見方が強まっている。そこで今回は、2000年以降に設立・創業し、リーマンショックや震災の影響を乗り越えて10年以上成長し続けている企業に注目、その共通点を探った。

2012年10月24日

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株式会社帝国データバンク<br>
産業調査部 情報企画課 課長/昌木裕司氏

株式会社帝国データバンク
産業調査部 情報企画課 課長/昌木裕司氏

1986年明治大学政治経済学部卒業後、株式会社帝国データバンク入社。本社人事部、企画部を経て2002年より広島支店営業部長、情報部長に。2009年4月より東京支社情報部情報取材課長として、上場企業などの大型倒産取材に携わる。2012年10月より現職。

「企業の10年後生存率」は約7割、20年後は5割に

そもそも、「企業の10年後生存率」は、実際のところ何パーセント程度なのだろうか?中小企業庁がまとめた、1980年〜2009年に創設された企業の創設後経過年数ごとの生存率の平均値を示したグラフを見ると、10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が倒産・撤退している。新しい企業は絶えず生まれているが、創設後の淘汰もそれだけ厳しいのだ。
企業の信用調査の専門家である帝国データバンクの昌木氏は、「創設後30年が、企業のターニングポイントの一つ」と見る。「創業100年以上の企業の営業年数を社長の人数で割ると、おおよそ30年。社長の『代替わり』のときは、後継者問題や事業ドメインの変化による経営不安が生じがち。このタイミングで経営が傾くケースは少なくありません」
では、特に外部環境の変化が激しかった2000年代創設企業の中で、創設後10年以上事業継続し、かつ帝国データバンクにおける信用度も高い企業群には、どんな共通項があるのだろうか?昌木氏にポイントを挙げてもらった。

条件1●「成長業界のニッチ分野」に注目し、先駆者として市場参入している

2000年以降に創設された企業のうち、中小企業から大企業に成長した企業の業種構成を見ると、「情報通信業」と「医療・福祉分野」に多いのですが、実際、2000年代に設立・創業し、10年以上事業継続している企業を見ると、「このいずれかの業界でニッチな事業を見出した」企業が目立っています。
例えば、2000年1月設立の株式会社マクロミル。当時もアンケートリサーチ会社はありましたが、インターネットリサーチ専業会社は当時まだ少なかった。そこに目をつけて一気に業績を伸ばしました。携帯コンテンツ会社の株式会社ザッパラス(2000年3月設立)、通所介護サービスを手掛けFCも展開する株式会社やまねメディカル(2002年6月設立)なども同様。今では参入企業が増え、一市場を築いていますが、当時は参入企業がほとんど少なかった分野の先駆者的存在です。
また、成長分野以外でも、「ほかの企業はまだほとんど手をつけていないニッチ事業」を見つけられた企業は、成長を続けています。2000年11月設立の株式会社ノバレーゼは、ゲストハウスウエディングがまだ認知されていなかった段階で参入し、高いプロデュース力を武器に業績を伸ばしています。

条件2●自社のコアコンピタンスを認識し、そこに資源を集中投下している

「情報通信業」や「医療・福祉分野」には、この10年で数多の企業が参入しました。しかし、多くの企業が10年に至らずに倒産・撤退しています。生き残る企業との「差」は、「自分たちの強みをつかめているかどうか」が挙げられます。
創業間もないときは特に、自分たちの強みを理解し、それに基づく攻めるべき分野を明確に持っていることが重要。その「攻めるべき分野」に資源を集中し、自社の事業ドメインを早い段階で確立することが、企業の成長につながり、存続率を高めることにつながります。逆に、早く会社を軌道に乗せたいからと、創業まもない段階で総花的に事業展開する企業は、企業としてのコアコンピタンスが定まらず、頓挫しやすい傾向にあります。
例えば、ISP向けの接続サービスに強みを持つフリービット株式会社(2000年5月設立)は、コア事業であるインターネッ関連のインフラ提供事業を確立した後、ブロードバンドインフラ、クラウドコンピューティングインフラなど、将来の有望市場に資源を投入し始めています。また、2002年12月設立の株式会社スターフライヤーは、北九州空港をベースに事業展開し、格安の運賃を実現して話題を集めてきましたが、ここにきて参入が増えてきたLCC(格安航空会社)と一線を画すため、ハードでもソフトでも高いサービスを提供する「ハイブリッド・エアライン」に向けて舵を切っています。
設立・創業して10年以内の企業を見る場合は、自社の強みの分野を持ち、事業ドメインを確立しているか、確認しましょう。一つの事業分野が成功し、経営基盤がある程度安定してから、そこで得た資金をもとに次の事業へとコマを進めていくのが、企業存続という意味では現実的です。

条件3●経営者が「明確なビジョン」を打ち出している

帝国データバンクによる企業の調査項目の中には、「経営者の人物像」をチェックする項目もあります。企業のトップと面談する中で感じた「人物的特徴」を、25項目ある選択肢の中から選び、チェックを入れています。
2000年代に設立・創業し、10年以上継続している企業の「経営者の人物像」を見ると、「ビジョンがある」「積極的」「先見性に富む」「実行力がある」「責任感が強い」にチェックが入っていることが多いです。どれも経営者として当たり前だと思うかもしれませんが、これらの項目にチェックが入っていない企業も実は多いのです。
特に重要な項目は、「ビジョンがある」です。自社が何を目指しているのかが、経営理念として掲げられているかどうかだけでなく、社員一人ひとりにそれが浸透しているかどうかを確認することが大切。皆が同じベクトルを向き、突き進むことができてこそ、創業期の荒波を乗り越えることができるのです。
大学発ベンチャーの株式会社魁半導体(2002年9月設立)は、プラズマ現象を用いた半導体製造装置の開発や、バイオ医療、リチウム電池への応用研究を手掛ける会社。ベンチャーながら、社長が「堅実な事業の展開が重要」という考えを持ち、人材、技術、経営理念などの無形経営資源を債権者、株主、顧客、社員に伝えるために「知恵の経営報告書」を作成、企業概要や今後の事業計画をオープンにしています。そのため、社員一人ひとりが企業理念と方向性を理解し、「自らが事業運営に参画する」という意識を持てるように。投資先行で経営不安に陥る例も少なくない大学発ベンチャーにおいて、この会社は安定経営を維持しています。
上記の5項目からは外れますが、「経営者が数字に強い」ことも企業存続の条件。経営には緻密さや計数管理能力が不可欠だからです。「経営者の人物像」のチェック項目の中に、「計数面不得手」という項目があるのですが、ここにチェックが入っている企業は要注意と考えます。一般的に大学発ベンチャーがとん挫しやすいと言われるのは、経営者が技術畑の人で、数字に無頓着であるケースが多いから。いくら数字に強いパートナーがいたとしても、経営者自身が数字に強くない企業は、的確な経営判断が下せず、なかなか経営が軌道に乗らない…というケースが多いのです。

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