「営業」って幅が広いのに“ひと括り”にしてもいいの?

分野によってこんなに異なる!「営業の仕事」カタログ

「営業の仕事」とひと口に言っても、各企業によって仕事内容は全く異なります。1基何百億円というプラントを何年もかけて海外に売り込む営業もあれば、1個何銭の消費財を大ロットで問屋に売る営業も「営業」。実に幅広い仕事なのです。そこで今回は、「高額〜少額」「ロングスパン〜毎日」「一般消費財〜最先端技術」など、対象顧客や扱う商材、取扱い額、営業期間などが全く異なる3人の営業担当者を取材。営業の方法や必要なスキルの違いをレポートしました。

2012年7月11日

【商業施設の再生・開発営業】扱う案件は数億〜数十億円規模。コンセプト
づくりからテナント誘致、証券化まで、施設開発のあらゆる業務を担当

日本ビルド株式会社 岩田知之さん(40歳)

日本ビルド株式会社
営業本部開発事業部 係長
岩田知之さん(40歳)

■仕事内容は?
大型ショッピングモールやオフィスビルなど、商業施設の再生・開発を手掛けています。
例えば、商業施設から依頼を受け、集客力を高めるために新しい施設コンセプトを考えそれに合ったテナントに入れ替えたり、土地オーナーからの要望で土地の有効活用方法を考え、建物を建ててテナントを誘致するのが主な仕事。再生した商業施設の証券化に携わることもあります。取り扱う案件は、数億円規模がメインですが、中には数十億円規模の大型案件を取り扱うこともあります。

■営業先は?
主な営業先は、商業施設や土地のオーナーと、テナント各社。当社が取引しているテナント企業は、スーパーや飲食店、アパレルなど約1000社。営業担当者8人で定期的に訪問して、既存店の状況や出店ニーズを聞き出します。
その合間には、都心を中心に物件や土地をリサーチします。テナント企業のニーズに合う物件や土地を見つけたら、すぐにオーナーにアプローチ。何度も通って信頼関係を築き、テナント企業との間をつないで、施設の企画・建設全体をコーディネートします。テナント企業の出店計画は回復基調。特に、都心の駅前エリアへの出店意欲は旺盛です。各社の要望にこたえるために、足を使った地道な情報収集が欠かせませんね。ときには、同業他社や金融機関ともコミュニケーションを取り、物件情報を仕入れています。

■「営業として成長できた」案件は?
2006年に担当した、大規模ショッピングセンターの再生、証券化プロジェクトですね。プロジェクト規模は約20億円で、今まで携わった中でも一番高額の案件。約10カ月という短期間で、片っ端からテナント企業に営業をかけ、証券化のスキームを作り、リニューアルオープンにつなげた経験は、営業としての自信につながりました。
カギとなったのは、新しく誘致する15のテナント。消費者に支持されている勢いのあるテナントを誘致できれば、それだけ高い利益が確保できます。この15テナントを集めるために、実に300社に当たりました。出店するメリットを伝えるために、リニューアル計画から集客数のイメージ、予想される売上額などをすべて試算し、1社1社に物件の魅力を伝えて回りました。ようやく15テナントを集め切った時には、このうえない達成感を覚えましたね。無事に工事を終え、リニューアルオープンした日に長蛇の列を目にしたとき、施設の収益力に注目した外国の不動産ファンドに無事に売却ができたときにも、大きな喜びを感じました。

■この仕事に必要なスキルは?
当社の場合、営業の役割は非常に多岐にわたります。施設や土地のオーナー、テナント企業だけでなく、金融機関や投資家、ファンドとやり取りする機会も多いので、流通・飲食業界の動向や商業施設の知識だけでなく、金融や財務知識も必要です。商業施設の再生のためには、「利益を生み出す施設」にするために施設のコンセプトづくりから関わらなければなりません。もちろん、初めからすべてができるはずはありませんが、これらの新しい知識を素直に吸収しようとする柔軟性と向上心は必要不可欠ですね。
また、この仕事は、人と人とのつながりがモノを言います。あらゆる方面から情報を収集して、「この土地ならあのテナントさんに紹介しよう」「この商業施設の再生には、今勢いのあるあのテナントさんの誘致が不可欠だ」などと自分の中で情報をつなげ、提案を行うためです。そのため、人脈構築力はもちろん、そういうつながりから貪欲に知識を吸収しようとする力が求められますね。

【かつおぶしのルート営業】注文には即対応!毎日、営業自ら商品を配達して
そばやラーメン店などの個人店オーナーとじっくり信頼関係を築く

丸勝かつおぶし株式会社 内村裕二さん(36歳)

丸勝かつおぶし株式会社
営業部 課長
内村裕二さん(36歳)

■仕事内容は?
当社は業務用かつおぶしメーカー。かつおぶし以外にもさばぶし、煮干しなどさまざまな「だし」の材料を扱っています。これらをお客様である飲食店に配達し、信頼関係を築くのが当社の営業の仕事。地方のお客様には発送で対応していますが、都内近郊の場合は、前日に受けた注文を、翌日に営業自らが配達します。
発注いただく額は、数千円単位から、多くても十数万円単位。朝、営業車に商品を積みこんで、1日に25〜30店を回ります。ただ届けるだけでなく、「最近、調子はどうですか?」などと声をかけ、雑談の中からお客様の課題をつかみ、当社の商品で解決できることであればアドバイスすることも、営業の重要な役割です。外食産業のトレンドや繁盛店の情報などをお伝えすることも多いですね。

■営業先は?
営業先は、全国のそば店やラーメン店、和食店など。外食チェーンも主要顧客ですが、多くは個人店です。1店当たりの購入額が大きく変動することはありませんが、足しげく通うことで、他店を紹介いただいたり、のれん分け店舗でも当社の商品を仕入れていただくなど、新たな取引拡大につながっています。現在担当しているお客様は、1000店以上に上ります。

■営業において心がけていることは?
われわれは「だしのプロ」。味について意見を求められることは、とても多いですね。例えば、スープに深みを出したいと言われたら、かつおぶしの分量をこれぐらい増やしてはどうか?などと具体的にアドバイスします。このような質問に、いかに迅速にこたえられるかが、腕の見せ所ですね。かつおぶしやさばぶしなど自社商品に関する知識を持っておくのはもちろんのこと、繁盛しているそば店、ラーメン店には積極的に足を運び、今のトレンドをリサーチしています。「今は濃い目の味が受けているようですから、だしの配分をこう変えてみてはどうでしょう?」など、マーケットニーズに則ったアドバイスをすることも。店舗オーナーと同じ目線に立ち、どうすれば売り上げが上がるのかを当事者意識を持って考えるようにしています。それが、信頼関係につながり、息の長い取引やご紹介につながるからです。
個人店のオーナーは、他店をリサーチする時間が取れず、われわれからの情報をとても欲しがっています。人気店に足を運ぶだけでなく、情報誌を読んだり、テレビのグルメ番組や飲食店情報サイトを見るなど、情報収集は万全にしていますね。営業中も、ロードサイド店に目を配り、「あの道に○○が出店していましたよ。お客の流れが変わりそうですね」などの情報も会話の中に取り入れています。
地方のお客様も、頻度は低いものの定期的に訪問しています。「近くまで来たので、顔を見に来ました!」と立ち寄ると、どのお店も驚き、喜んでくださいますね。東京の外食事情やトレンドを質問されることが多く、ここでも日頃の情報収集が役に立っています。

■この仕事に必要なスキルは?
一番必要なのは、度胸でしょうか(笑)。営業相手は、店舗のオーナーであり、職人さん。みな強いこだわりを持っているし、個性的な人ばかりなんです。紹介などでお客様と初めて相対するときは、「どんな方なんだろう…」と今でもドキドキしますよ。年齢層も20代から70代までと実に幅広く、「どんな相手でもひるまない度胸と、円滑にコミュニケーションを取る努力」が重要です。
あとは、何といっても情報収集力ですね。個人店のオーナーは、みな不安を抱えています。消費者の嗜好は移ろいやすいもの。今日は繁盛していても、明日、明後日のことはわかりません。そんなお店のパートナーとなって、一緒に売り上げ拡大の策を練るためには、今の外食トレンドなどの情報収集が欠かせません。「駅前の○○店さんがこんな新メニューを出して、結構ウケているみたいですよ」など他店で仕入れた情報も、お店にとっては有益な情報。お店に代わって世の中のトレンドにアンテナを張り、外食にまつわるあらゆる情報を仕入れる努力が大切だと実感しています。

【凍結技術の技術営業】食品メーカーに1日10件以上飛び込み、新規開拓。
何度も足を運び、時間かけて、技術の素晴らしさと導入するメリットを伝える

株式会社アビー 志田昌敏さん(30歳)

株式会社アビー
営業部 課長代理
志田昌敏さん(30歳)

■仕事内容は?
「CAS(Cells Alive System)」という最先端技術の、技術営業を担当しています。CASは、パルスなど複数のエネルギーを組み合わせて素材内の水分子を振動させることで、細胞組織を活かす技術。主に、これを急速凍結装置と組み合わせると、素材内の水分の氷結晶化を抑制し、細胞組織を壊すことなく冷凍保存ができます。例えば、数年前に凍らせた魚は取れたてのようにみずみずしく、お寿司やお節などの加工食品も、風味やうまみを損ねることなく何年も凍結保存が可能です。
私は営業として、このCAS技術の普及・拡大に尽力しています。営業スタイルは、新規開拓営業。営業先をリストアップして、リストをもとに1日に10件以上飛び込みます。CAS技術の仕組みは、電話口で説明しても、にわかにわかっていただけるものではありません。まずは直接出向いて、ごあいさつかたがたCAS技術を解説したパンフレットをお渡しし、後日改めて電話でご連絡し、興味を持ってくださった企業に再訪するという方法を取っています。

■営業先は?
CAS技術の営業先は、第一次産業や食品メーカーが中心。その中で私は、中小の加工食品メーカーを担当しています。国内消費の低迷を受けて厳しい環境に置かれている中小企業をメインターゲットとしている理由は、CAS技術を利用することで、コスト構造を大幅に改善してほしいという会社の思いからです。
CASを使えば、丹精込めて作った食品を、国内はもとより海外に輸出することも可能になります。また、食材の長期保存ができるのでロスがなくなりますし、作業の平準化も可能です。例えば、閑散時期に食品を加工して冷凍保存し、繁忙期に備えておけば、適正人員で無駄なく生産ができます。繁忙期に作業が集中するお節やクリスマスケーキ、需要が読みにくい冠婚葬祭用のケータリング業者などには、特にメリットが大きいと思います。
現在の顧客は、既存顧客、検討中の顧客合わせて約30社。1機2000万円以上する受注生産の装置ですので、すぐに購入を決断する企業は稀ですね。何度も足を運び、顧客企業の課題をじっくり聞き出してから、ニーズに合った装置をカスタマイズして提案し、「導入すればどんなメリットがあるのか」を具体的にお話ししています。この仕事に就いて5年になりますが、CASの魅力を理解しながらも、資金面でなかなか決断ができず、5年間検討し続けてくださっている企業もありますよ。

■この仕事で得られる喜び、醍醐味とは?
CAS技術を理解してくれた企業に、「本当に夢のある技術だね!」と期待をされるときに喜びを感じますね。先日は、ある企業から当社に「CASを使った新規事業を思いついたのでぜひ詳しく教えてほしい」との連絡が入りました。以前からフードビジネスへ進出したいという思いがあったものの、なかなか一歩を踏み出せないでいたが、CAS技術をニュースで知り、「思いを実現できる!」と確信したのだそう。新しいビジネスにかける社長の熱い思いに触れ、責任の大きさを実感するとともに、そんな思いを支えることができる嬉しさを感じましたね。
CAS技術は、医療分野でも研究が進んでいます。親知らずなどの健康な歯を凍結保存し、数十年後に移植するという技術はすでに事業化されています。臓器移植分野では、CAS技術を応用して臓器移植の猶予期間を延ばしたり、がん治療の際に大きなダメージを受ける卵巣を一時的に取り出して凍結保存し、治療後に元に戻すなどの研究が進んでいます。CASの発展によって、「助からなかった命」が助かるようになる時代が早晩やってくると思うと、ワクワクしますね。大きな夢と可能性を持った技術を扱えていることが、営業としての誇りにつながっています。

■この仕事に必要なスキルは?
最も必要なのは、「顧客企業の目線に立って考える姿勢」ですね。CAS技術のよさは、どの企業もすぐに理解してくださいます。最近はTVや新聞、ネットなどで取り上げられることも多く、飛び込み営業先でも「知っているよ」「いい技術だよね」といわれる機会が格段に増えました。そこから購入を決断していただくのが、営業の大事な仕事。いい技術だとはわかっていても、自社に導入してどれだけのメリットがあるのか、初めはどの企業も測りかねています。何度も足を運び、経営の課題を語っていただけるようになるまで信頼関係を構築し、「この人だったら、大事なお金を投資してもいい」と思っていただけるようになるのが重要です。そのため、決して「売り込もう」とは考えません。常に経営者の立場に立って、今どんな経営課題があり、何を求めているのかを考え、利益を挙げられるまで一貫してサポートする姿勢が大切だと感じています。
また、この技術を愛し、将来性の高さを信じる「信念」も重要だと思いますね。CAS技術がどんどん活用されれば、第一次産業や中小企業を元気にできるし、医療分野でも、今までできなかったことが可能になる。われわれがCASを広めることが、日本全体の活性化にもつながるのだという自負が、毎日の原動力になっています。

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EDIT&WRITING
伊藤理子
PHOTO
設楽政浩/平山諭/TAKE

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