日系企業の進出加速でベトナム、シンガポール、香港で採用急増

アジアで採用拡大中!ITエンジニア採用の現場レポート

アジアに製造拠点を設け、アジア各国への事業拡大を目論む日系企業が増えている。それに伴い「ITエンジニア職」の採用が拡大しているという。どんな国で、どんな経験・スキルを持ったITエンジニアが求められているのだろうか? 現在の転職市場の動向を探るとともに、アジアで働くメリット、デメリットを現地で働く日本人に聞いた。

2012年3月28日

【ITエンジニア職の求人動向】どの国で、どんな人が求められているのか?

日系企業のアジア進出拡大を受けて、ITエンジニア職の採用ニーズが増加している。中でも、現地法人のITインフラを整えたり、現地の開発部隊を束ねるという役割が多い。アジアに進出している日系企業向けに人材紹介を手掛けるRGF HR Agentによると、中でもベトナム、シンガポール、そして香港において採用が活発化しているという。
各国での採用拡大の背景と求められる人材像、必要な語学レベルなどをRGF HR Agentの各国担当者に聞いた。

■ベトナム
開発実務経験を積んでいれば、若手でも現地エンジニアをまとめるPL、PMとして採用

ベトナムにおいては、昨年後半より、ハノイ、ホーチミン中心にIT企業の進出が急増しています。特にスマートフォンアプリ関連の中小・ベンチャー企業の進出が目立っています。人件費の安さに加え、ITスキルを持った人材が比較的多いことから、ベトナムでの開発を目的にした企業進出が目立っています。
それに伴い、自社で抱えているベトナム人エンジニア、もしくは提携する現地開発会社のエンジニアをまとめるリーダーとして、彼らを教育しながらプロジェクト全体を把握し、推進していける人が求められています。PL、PM経験者は大歓迎ですが、マネジメント経験はなくても、若手で開発がある程度できる人であれば活躍できる可能性はあります。
ベトナム人エンジニアは英語を話せる人が比較的多いので、彼らを束ねるリーダーについていただく以上、英語力は必須です。ただ、会話の中身は専門用語がほとんどであり、意思疎通はしやすいので、TOEIC700程度あれば問題ないとする企業が多いようです。一方、ベトナム語でIT関連の話をするのは難しいため、ベトナム語スキルを日本人に求める企業は稀ですね。

■シンガポール
SIerでのERP導入コンサルタント、インフラエンジニアなどのニーズが拡大中

日系企業の東南アジアへの進出加速に伴い、各拠点のハブ機能を果たすシンガポールにおいてもさまざまな採用ニーズが拡大しています。特に、日系企業の社内SEや、日系企業にサービスを提供するSIerでのエンジニア採用が増えています。
具体的には、SIerでのERP導入コンサルタント、インフラエンジニア、システムサポート職ニーズが高いですね。ERP導入コンサルタントの採用増は、日本で導入しているERPパッケージを現地法人に向けロールアウト(運用展開)する案件の増加に伴うもの。同じく、インフラエンジニアは、シンガポール進出や現地ビジネスを強化している法人に対する社内IT環境整備の案件が増加しているため。そしてシステムサポートは、複数のIT企業がシンガポールにサポートデスクを設置して日系企業向けのサポートを強化しているため、それぞれ採用が増えています。SIer以外では、金融機関の社内SEニーズが目立ちますね。東南アジアビジネスの強化に伴い、採用を強化しています。
求められるのは、専門分野での経験と英語力。英語力は、ビジネスレベルが求められます。TOEIC750が一つの基準ですが、点数よりも「ビジネスシーンにおいて正確なコミュニケーションが取れるかどうか」が重視されます。なお、日本人エンジニアに対して英語以外の言語スキルが求められるケースはまずありません。また、開発チームがマルチナショナルな人員構成となっているケースが多いため、日本レベルの品質の保持を目的としながらも、各国出身の同僚や協力会社をマネジメントするための柔軟な対応力やコミュニケーション力が求められることも特徴です。

■香港
ECビジネスを手掛ける日系企業の進出加速で、Web系エンジニアの採用が増加

香港においては現在、現地の消費者をターゲットとしたECビジネスを手掛ける日系企業の進出が加速しており、Web系エンジニアの採用が活発化しています。香港は経済成長が活発であり、日系企業にとっても魅力的な市場ですが、地価(賃貸料)の高さがネック。ネットを駆使したマーケティングと販売が、ビジネスを展開するには最も効果的だと認識されてきたためです。
そのため、採用ニーズが旺盛なのは、Webページのコンテンツ制作、プログラミング、保守メンテナンス。それぞれの職務担当者は、ローカル人材に託されるケースも増えていますが、日本人スタッフはこれらの流れ全体を統括できるオールマイティなスキルが求められていますね。サイト構築に直接関わる場合は、PHP、Flashスキルも必要とされます。
語学力は、社内・社外スタッフとコミュニケーションが取れる程度の英語力が求められます。TOEICの目安は700ですが、スコアがこれに至らなくても社内業務が円滑に進められる会話力があれば評価するという企業が多いですね。なお、英語ができなくても、北京語、または広東語でコミュニケーションが取れるのであればOKという企業も多いですね。その場合はHSK(中国語の国家試験)7級レベルが目安になります。

【現地で働くITエンジニア職の声】アジアで働くメリット、楽しさ、大変さ

■ベトナム勤務 株式会社gloops 奥田栄司さん
向上心の高い現地エンジニアと一丸となって突き進む。非常にエキサイティングです

株式会社gloops 奥田栄司さん

株式会社gloops執行役員 海外開発拠点構築担当 
兼 gloops Vietnam Co.,Ltd.CEO
奥田栄司さん(34歳)

gloopsはソーシャルアプリケーション事業を展開する会社。私のミッションは、海外での開発拠点の構築です。今後gloopsがグローバルにサービスを提供していくにあたり、グローバルな視点でサービスを開発できる拠点の構築は急務。単なるオフショア開発拠点になるのではなく、自分たちで企画から設計、開発、運用までを一貫して行うことができる組織づくりが当面の目標です。
以前は大手SIerに勤務し、大規模業務システムの開発に従事していたほか、アメリカにて日系企業向けのシステム導入プロジェクトに携わっていました。以前からコンシューマー向けのWebサービス開発に興味を持っており、gloopsの海外展開に魅力を覚えて転職。2011年11月より、この地に赴任しています。
ベトナムには、勉強熱心で技術の吸収力が高いエンジニアが多いですね。社内で自主的に勉強会を開いたり、仕事帰りに学校に通ってスキルアップに努めるなど、向上心にあふれています。日本の技術力にはまだ達していませんが、今後は大きく伸びるでしょう。これが、最初の開発拠点をベトナムに設けた理由の一つでもあります。
一方で、「品質に対する考え方」が日本と大きく異なる点には苦労させられますね。日本基準では本番には反映できないレベルのものでも、「動くから大丈夫」と本番に反映しようとします。最終的には日本人の目で品質チェックしないと、高品質は維持できません。現地スタッフに高品質のものにどんどん触れてもらい、目を養ってもらうのが今の課題です。
しかし、文化や考え方が異なる人たちと一丸となり、一つの目標に向かって突き進むのは、非常にエキサイティングですね。日々さまざまな問題が発生しますが、一つずつ、現地スタッフと議論しながら解決していくプロセスは非常に楽しく、やりがいがありますよ。

■シンガポール勤務 Sumisho Computer Systems(Asia Pacific)Pte.Ltd. 久原和幸さん
文化や言葉の壁を乗り越え、現地エンジニアとの意思疎通を図ることが醍醐味です

Sumisho Computer Systems(Asia Pacific)Pte.Ltd. 久原和幸さん

Sumisho Computer Systems(Asia Pacific)Pte.Ltd. 
久原和幸さん(37歳)

当社では、シンガポールに進出している日系企業向けに、アジア地域におけるITインフラの整備・拡充を担当。私はチームリーダーとしてプロジェクトを率いています。
今までも、システム開発畑を歩んできました。大学卒業後ソフトウェア会社に入社して、データベース講師を中心に顧客サポートに従事。その後金融系企業のシンガポール拠点にて、東南アジアの地域統括業務に携わりました。その後、いったん帰国してメーカーのグローバル統括業務に従事しましたが、成長著しいアジアに身を置いてさらに成長したいとの思いがわき起こり、2008年に再度シンガポールに渡り現職に至りました。
現地のエンジニアとは、言葉はもちろん、文化も宗教も異なります。彼らを理解し、自分の意思を伝えることの難しさは感じますね。時間に対して「比較的おおらか」であるうえ、伝えたことが伝わっていないということも多く、常に再確認やフォローアップする必要があります。仕事のコミュニケーションに関して「もうひと手間」が必要である点は大変ですが、無事に自分の意思を正確に伝えられたときの喜び、やりがいはその分大きいですね。
シンガポールは、橋を渡るとマレーシア、船で少し海を進めばインドネシアと、とても近くに国境を感じられる国です。もう何年もこちらで仕事をしていますが、すぐに隣の国を感じられるのが面白く、刺激的な環境だと日々感じています。また、知らない人にも気軽に話しかけたり、親切にする国民性も魅力ですね。道であった知らない人に話しかけられ、いつの間にか友達のように会話がはずんでいることも多いですよ。

■香港勤務 日系化学品メーカー IT部門マネージャー I.Mさん
昨日できなかったことが、今日はできる。日々成長を実感できる環境です

日系製造業のIT部門マネージャーとして、社内基幹システムやインフラの維持管理、グループ内のIT化推進におけるコンサルテーションと改善提案、推進などを行っています。
日本ではSIerでソフトウェア開発のPM、営業支援、社内システム管理などを行っていました。香港に来て丸4年、あっという間でしたね。日本以外のどの国でも共通だと思いますが、日本ならではの「以心伝心」の考え方は一切通用しません。母国語でない言葉を使って意思を伝え、指示し、説得し、ときには抗議する…を繰り返すのは大変です。また、IT現場でいえば、日本のPMは膨大なテストケースを用意してあらゆる局面を想定しますが、こちらでは正常系のテストのみで、異常系のテストについてはあまり熱心ではありません。「動かしてみて、バグが出たら直せばいい」という感覚なので、彼らが言うことを鵜呑みにしていると運用で痛い目に遭います。また、「責任範囲を明確に区別する」仕事スタイルなので、自分の職務はきっちりこなしますが、意味もなく他人の仕事に介入したり手伝うことはしません。
一方で、現地の人は自分の価値を挙げる努力を欠かしません。仕事の後に学校に通う人が多く、日本語や英語、北京語などの語学、会計など、少しでも良い給料を得るために一生懸命努力します。広東語、英語はもちろん、北京語と日本語など複数の言語をビジネスレベルで操る人が多いのには驚かされますね。
香港での仕事は、大陸(中国)を抜きにしては成り立たないので、中国側のスタッフとのやり取りは欠かせません。北京語のスキルだけでなく、中国経済の動向など常に新しいものを吸収しなくてはなりません。大変ではありますが、「昨日できなかったことが今日はできている」と実感できる醍醐味も大きいですね。

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伊藤理子

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