ビッグデータ、クラウド、スマートデバイス、モバイルアプリ

2012年のIT業界を動かす4つの潮流

昨年はスマートフォンやタブレット端末の急速な普及でモバイルアプリ開発が盛り上がったり、ビッグデータやHadoopなど大規模データや処理技術に注目が集まった。そして迎えた2012年、IT業界はどのような動きや変化を見せるのか?3人の識者に意見を伺った。

2012年1月11日

ビッグデータ時代の本格到来で、インフラエンジニアに求められるログの分析&注目すべき仮想化技術

株式会社データホテル
執行役員 CTA
情報環境技術研究室室長
伊勢幸一氏

ビッグデータ時代を迎えて、ストレージなどの既存インフラ技術ではもはや対応できない状況の中で、より安価で手間をかけずに大量データを保有していく分散ストレージやクラウド、仮想化技術が普及してきている昨今。そこで2012年、特にインフラエンジニアにとって重要なキーワードとなるのが、「データの質の見極めと、それに合わせて最適化しデータベース化するノウハウ」だと、ネットワークインフラ領域に精通する伊勢氏は指摘する。

「これまでトラフィックやログの分析といった場合、全体のボリュームに関する分析が主で、その中身を見極めようとする視点すら、インフラエンジニア側にはなかった。しかし今後、飛躍的にトラフィックやアクセス数が激増していく中で、やみくもにすべてのログデータを保管することは困難であることは、容易に想像できます。そこで『そのデータは本当に必要なものか?』『必要だと判断した場合、どういう形式で最適化&加工した上でデータベース化していくか』といった見極めや作業が、間違いなく必要不可欠な時代になっていることに気付くべきです」

特に今年以降、大量の生ログの中から必要なものだけをデータベース化し、それ以外は思い切って捨てていくスタイルが主流になると伊勢氏は予測する。
またその中で技術的な視点から今年、ビッグデータを処理・分析するための効率的な手法として注目されるのが、仮想ファイルシステム(複数のサーバファイルをひとつに見せる)と仮想オブジェクトストア(アプリケーションデータをオブジェクトとして見せる)を組み合わせたもの。これによって、低コストで大量のデータを処理できる上、複数の階層で保管するためリスクヘッジにもつながるメリットがある。GoogleやFacebook、アマゾンなどの大手ネットサービス企業は、こうした技術をいち早く導入しており、それがさらに広がっていくと予想される。

そこで2012年、インフラエンジニアが活躍していくためのアドバイスとして挙げているのが、「80%は自分の専門分野知識&スキルを高める 20%は専門外の分野に飛び出し、新たな技術をキャッチアップする」というものだ。
「例えば仮想化システムやオープンスタックストレージシステムなど、自分の関わっているテクノロジーレイヤーでわからないものを見つけ出すこと。“無知の知”ではないけれど、それだけでも非常に価値のあることです。見つけることができれば、その技術をどう効果的に利用すればいいのか、実験を繰り返す。技術を習得するのが目的ではなく、技術の特性を理解した上での使い方やアイディアを習得することが、先ほど触れたデータの質の見極めと、それに最適化した活用を実現できるのです」

2012年、「PaaS」「IaaS」を中心としたクラウド市場が拡大

株式会社アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト
甲元 宏明氏

「当社の調査では2010年度、PaaS(Platform as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)の売り上げが前年の3倍強に拡大し、2011年度はさらにその倍になると予想しています。特に昨年の東日本大震災以降、リスク分散の視点からクラウドを導入する企業が飛躍的に増えていることから今年、SI企業の多くがクラウドビジネスに注力することになるはずです」と指摘するのは、クラウド事情に詳しい甲元氏。

昨年度の大手SI企業10社の売り上げは軒並み好調で、中でも新規によるシステム構築案件の柱として、クラウドビジネスを軸に置いていることからも、甲元氏の指摘は確かな根拠がある。また、同社の予測では今から4年後の2015年度には、クラウド(IaaS)は1,300億円の市場に成長し、2010年度から2015年度の年平均成長率(CAGR)で36%の大幅なアップを見込んでいる。
このようにここ数年で完全にクラウド市場が定着してきた流れを受けつつ、今年以降、さらにPaaS IaaSを中心にクラウドの更なる深化・発展は間違いなく進行していくだろう。
そして、クラウドの急速な市場拡大に対応するためにエンジニアに求められるのは、顧客のニーズにマッチしたシステムを提案〜開発〜運用までをクラウドのメリットを最大限活用しながら、ワンストップで提供できるソリューション力。クラウドに関わる多くのエンジニアにとってその重要性は今年、ますます高まっていくであろう。

スマートデバイスの普及により、Javaエンジニアを中心に活躍のチャンス拡大

またクラウドと同じくもう一つ、2012年に注目すべきテーマとして甲元氏が挙げたのが、「スマートデバイス」だ。同社の「IT投資動向調査2012」によると、「スマートデバイスの業務への活用」に対する2011年度の実施率が約15%に対して、2014年度の実施予想が約55%と、飛躍的にアップするとみている。
「スマートデバイスに関しては近年、店舗用システムや営業支援ツールとしてスマートフォンやタブレットを導入する企業が増加の一途をたどっています。特にAndroid端末向けのJava開発案件が増えているので、SIなどのシステム開発企業が続々と参入してくるはずです」

そこで注目すべきなのが、Java経験のあるエンジニア。開発言語の中でもポピュラーかつ経験者の多いJava技術者にとって、Android端末の急速な拡大は、これまで縁の薄かったスマートデバイス向けのアプリ開発に携われる大きなチャンスだ。

モバイルアプリはワールドワイドの戦いへ 一握りの勝ち組と大多数の負け組がはっきり決まる転換点に

株式会社ループス・コミュニケーションズ
代表取締役社長
斉藤 徹氏

「現在興隆を極める勢いのソーシャルゲーム等のモバイルアプリ市場は、2012年の前半で一つの転換期を迎えると考えています」と語るのは、ソーシャルメディアやプラットフォーム上での各社施策に精通する斉藤氏。
昨年、スマートフォンの急速な普及でプラットフォーマーやソーシャルゲームデベロッパーを含めた、モバイルアプリ周辺市場は順調に拡大を続けてきた。しかし現在の市場の拡大を支えているのは、従来のフューチャーフォンからスマートフォンへの乗り換え需要によるところが大きい。だがそうした需要が長く続かず、現在のバブル的な需要は早ければ今年後半には落ち付くとみる。

そこで2012年、モバイルアプリ市場における主戦場は、国内から海外にシフトしていくことが予想される。しかしここでも、非常に厳しい競争になると斉藤氏は予想する。
「一般のユーザーが利用するモバイルアプリの大多数は、無料のものが圧倒的に多い。その中でビジネスとして収益を生み出し、成立させるためには広告であったり、ある一定のレベルを超えてプレイするために課金する仕組みであったり、海外でも通用するビジネスモデルを確立できなければ、安易に海外に出て事業を拡大させていくことは困難でしょう」
そのため今年中には、すでに世界でも数社に集約されつつあるプラットフォーマーと、世界的にヒットさせた実績のあるソーシャルゲームデベロッパーが生き残り、その他多数の企業は事業縮小や撤退の動きが顕在化することが予想される。

しかし日本の企業にも、他国にはない大きな強みがあると斉藤氏は語る。
「モバイルアプリ、特にソーシャルゲームの課金システムによって、一人のユーザーにどれだけお金を使ってもらえるのかというノウハウを蓄積している企業が日本には多いので、その強みをうまく海外でも活用すれば、大きく成長していける可能性はあります。現に日本のコンテンツや課金システムは、海外からの分析対象になるほど注目されています。」
そういった厳しい競争に打ち勝つため、今後、モバイルアプリ開発者に必要とされるスキルは何か、斉藤氏に挙げてもらったところ、「2つ以上の軸を持つ専門家になること」だという。
「今はアプリバブルといって良いと思います。バブルを超えるとベンチャーは淘汰されていくでしょう。つまり、さらに次のステップアップを今から意識しておくことが大切だと思います。その時に大切なのは専門性です。それも関連した2つの専門性を合わせ持つと稀少価値が出てきます。例えば技術+マーケティングというように。将来を見据えて、自らの専門性をどこにおくかを意識して仕事をすることをお勧めします。」

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