CRM、SNS、webサービス、ITの進化で何がどう変わる?

「営業職は10年後になくなる」説は本当か?

ITの進化、SNSの台頭などを受け、近年「営業職」の役割が大きく変化し始めています。加えて、内需の縮小を受けてあらゆる日本企業が海外市場に打って出ようとする中、国内における営業職のニーズは縮小傾向をたどると見られています。果たして、「営業職」の役割はどう変化していくのでしょうか?専門家への取材で検証しました。

2011年10月5日

<ADVISER>

株式会社アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト/甲元宏明氏

クラウド、ITアーキテクチャ、開発言語・方法論、ネットワーク、CRM分野に関するアナリスト業務を担当。主に、ユーザー企業の製品選定、再構築、導入プロジェクトへの支援を数多く手がけ、ITベンダーの事業戦略コンサルティングにも取り組んでいる。

株式会社リクルート
ワークス研究所 研究員/中村天江氏

キャリア支援サービスや求人広告事業の企画職を経て、2009年4月より現職。労働市場における需給調整のあり方や機能に関するLMI(Labor Market Intermediation)が専門。

転職アドバイザー
転職バー「とこなつ家」オーナー/鈴木康弘氏

リクルートエージェントを経て、留学斡旋・語学学校運営会社で取締役を務める。現在は転職アドバイザーとして活動するかたわら、転職相談できるバー「とこなつ家」(東京・池袋)を経営。若手の転職相談や海外就職相談を特に得意とし、大学生向け就職支援会社「DEiBAカンパニー」の立ち上げも手掛ける。

【ITコンサルタントの見解】
営業の役割は「ヒアリング」「提案」「コンサルティング」に集約され、担当
領域が狭まり専門性が増す。今後10年間で営業の数は半分になる可能性も

■営業職の役割はどう変わる?

株式会社アイ・ティ・アール 甲元宏明氏

株式会社アイ・ティ・アール
甲元宏明氏

「日本の営業」は、海外と比べると“特殊”です。顧客のもとに足しげく通って信頼を得る…という俗人的な側面がいまだに強いうえ、業務範囲が非常に広いのも特徴。海外では、営業職の職務範囲は企業によって異なるものの、提案担当、フォロー担当など各人の役割が明確に決まっています。一方、日本では職務範囲があいまいで、見込み客のリストアップから新規開拓、ヒアリング、提案、コンサルティング、いざ受注したら納品、アフターフォローと、プロジェクト全体を取り仕切る役割を営業一人が担っています。優秀な人ほどこのような傾向にあります。
しかし、グローバル化が加速するにつれ、今後は海外勢を相手に戦うことになります。営業一人の守備範囲が広く、一つひとつの工程にどうしても時間とコストがかかる従来型の営業スタイルは、海外勢の専門領域に特化した低コストでスピード感のある営業には、到底かないません。ITを駆使して、自動化できる工程はすべてITに移管していかないと、日本企業の衰退は目に見えています。
早晩縮小すると見られるのは、商品説明や注文、見積もりといったロジスティックス部分。震災後に強まったIT投資抑制の動きがここにきて緩みつつあるうえ、先送りにしていた海外進出にいよいよ本腰を入れる企業も増えており、営業プロセスのIT化は今後さらに進むと見られます。
一方で、顧客の要望や悩みをじっくり聞き出し、最適なソリューションを考えるという業務はなくなりません。ここは日本の営業が最も得意とするところであり、海外企業には欠けている部分。日本企業ならではの「顧客第一主義」の姿勢は海外企業においても歓迎されるため、世界市場においても優位に立てるポイントです。
すなわち、営業職の役割は、「ヒアリング」「提案」「コンサルティング」の3点に集約されるでしょう。その結果、向こう10年で営業職の数は半分程度に減る可能性もあると見ています。

■営業として生き残るために、身につけるべきスキルとは?

ヒアリング・提案・コンサルティング部分は、日本の営業が強い部分ではありますが、どうすればより効率的に顧客の課題を解決できるかを「考え抜く力」はさらに鍛えるべきでしょう。
これからの営業職は、自社の商品カタログの中だけで顧客の課題解決を考えるようでは生き残れません。課題解決部分に特化した存在になるだけに、自社商品・サービスの中に顧客の課題解決に適したものがなければ、ライバル社とパートナーシップを組んで他社ソリューションも含めた課題解決策を提案する…ぐらいの柔軟な考え方が必要です。
また、これだけTwitterやFacebook などソーシャルメディアが普及しているのに、営業場面で活かし切れていない人が実に多いと思います。例えばマンション営業に就く人ならば、SNSで「マンション」などと検索すれば、マンション購入に興味がある人の志向や興味があるテーマをつかむことができ、より的確な提案につなげられるでしょう。欧米ではすでにFacebookは営業ツールとして駆使されています。グローバルに戦うことを考えたらなおさら、今のうちにソーシャルメディアを使いこなす努力をすべきです。

【人材・労働系シンクタンクの見解】
営業の数自体は減らないが、「グローバルに活躍できる正社員」と
「国内のみで営業活動する非正規社員」に二極化する

■営業職の役割はどう変わる?

株式会社リクルート 中村天江氏

株式会社リクルート
中村天江氏

ワークス研究所の試算では、10年後の2020年も、営業職そのものの数は減りません。しかし、その中身は大きく二極化する見通し。主に海外市場で活躍するハイスキルの正社員営業職のニーズが拡大する一方で、国内にとどまる人は非正規雇用に移され処遇も下がる…という構図が予想されます。
日本経済が成長過程にあるときは、最前線で売り上げを稼ぎだす役割の営業職は一番に優遇されますが、今の日本のように内需がシュリンクしている状況下では、真っ先にマイナス影響を受けます。今後は大手だけでなく、中小企業にもCRMの活用による業務プロセス見直しの動きが広がり、国内における営業業務の一部は「誰にでもできるように定型化」されていくでしょう。それに伴い、国内営業を担うのは正社員ではなく、非正規雇用の社員が増えると見ています。
一方で、企業の海外進出、グローバル化に伴い、海外での新規開拓営業や技術営業など、語学や専門知識を持ち合わせたハイスキル層のニーズは拡大。待遇も当然厚くなります。
つまりは、優秀な人材は海外ビジネスを中心に抜擢され、今より高い処遇となる可能性が高いのですが、それ以外の人はITに取って代わられることで今より処遇が下がったり、非正規雇用となる可能性があります。また別の職種への転職を余儀なくされるかもしれません。

■営業として生き残るために、身につけるべきスキルとは?

真っ先にするべきは、今携わっている仕事の「目利き」をすること。扱っている商材は、将来性があるものかどうか?会社自体の経営状態は大丈夫か?客観的に見て、成長がほとんど見込めないようであれば、成長力のありそうな会社に移って経験を積むべきです。
国内の人口構造で見れば、医療や介護、製薬などは引き続き成長が期待できる分野。技術の高度化に伴う情報通信分野も有望産業でしょう。海外にも受け入れられる商品を生み出し、早々に海外展開を始めているメーカーならば、海外営業に携われるチャンスも広がりそうです。そういう業界、分野の中で転職先を見つけるというのは、自身の市場価値を挙げる一つの方法です。
そのうえで、営業スキル以外のプラスアルファの能力…例えば語学力や、IT知識など、将来性の高いサブスキルを身につけること。今後も人材ニーズが高い営業は、自社製品に関連する専門性や、顧客との交渉力、社内調整力などを有しているものです。定型的な営業スキルしかない場合は、ゆくゆくはその業務が効率化の対象とされ、営業としての立場や処遇が危うくなるかもしれません。

【転職アドバイザーの見解】
「Webでも買えるもの」の営業は激減し、
住宅、車など「わかりにくく説明が必要な商材」を扱う営業は生き残る

■営業職の役割はどう変わる?

転職アドバイザー 鈴木康弘氏

転職アドバイザー
鈴木康弘氏

今の営業職の一番の競合は、ITです。意識すべきなのは、他社の営業職ではなく、「営業を使う以外の拡販手段」すべてが競合。すなわち、ITに取って代わられる営業工程、そしてインターネット上でも売れる商材では、営業の存在が必要なくなります。
経営者の立場に立って見れば、営業を雇わず、Webを使って低コストで商品が売れれば、それに越したことはありません。だから「Webで代行できないことに関して、営業の存在価値は残る」ことになります。では、具体的にはどういう分野で残るのか。
まずは「扱う商材」。ネットで買えないもの、もしくは買いたくないものを取り扱う営業は残ります。例えば、住宅。モデルルームを見て、設計図を見ながら営業と打ち合わせをして、納得して買いたいと思うでしょう。車もそうです。ほかの車との性能の違いを聞き、試乗をして、ローンの組み方を相談しながら買いたいと思うはずです。すなわち、「重要性が高く」、「自分ひとりでは理解が難しい」商材には人が介在する必要があるため、これからも営業の存在価値は継続します。
次に「携わる工程」。これも同様に、人以外の手段で低コストでできる仕事はなくなり、ほかの手段に代替できない部分は残ります。営業先のリストアップやアポ入れは、DMやSNS、ホームページの反響営業に取って代わられるでしょう。訪問やヒアリング、提案・コンサルティングは、物販に関しては減るでしょうが、先ほど挙げた一部の「営業の介在が必要な商材」に関しては残ると見られます。アフターフォローに関しては、現状維持、もしくは増えるでしょう。各社が値引き以外の付加価値で差別化を図るときのポイントになり得るからです。

■営業として生き残るために、身につけるべきスキルとは?

これからも生き残る営業のタイプには、3タイプあると見ています。
1つは、「CRMのプロ」。CRMを使いこなし、顧客データベースをもとに効率化を考え、次の提案に活かせるスキルを持つ人です。
たとえCRMを使う環境にいなくても、ITを活用して顧客管理を効率化することが大切です。例えば、顧客フォローは電話ではなく、メーリングリストで一斉配信したりSNSで告知すればかなりの効率化が見込めます。人がモノを買いたいと思うときは、パッと瞬間的に頭に浮かんだものしか買う対象に入りません。メールやSNSで随時近況報告をしておけば、いざという時に「思い出してもらえる対象」に入れます。
2つ目は、「代理店を取りまとめる人」。すなわち、商品に対して知識や愛着の少ない営業が売りやすいよう、効率的な売り方を総合的に考え、指導できるスキルを持つ人です。将来的に、営業部隊が縮小し、アウトソースが増えても、彼らを束ねて動かす指揮官は必要です。一般的には、管理職に就かなければ部下の指導はできませんが、このようなスキルを早期に身につけたい場合は、一度代理店営業職に就いてみるのも一つの方法です。
3つ目は、「トップアプローチのできる対面式営業のプロ」。30代後半〜60代に多いと言われる、顧客接点の多さを武器にした人脈構築力を持つ人です。こんな旧来型の営業が残るの?」と疑問に思うかもしれませんが、企業から見れば、新人営業を10人採用するよりも、すでに人脈を持ち電話1本でトップアプローチできるベテラン1人を雇ったほうが、コストも安く、長く培ってきた顧客との関係性もあるので営業も効率的。法人営業ならば部長以上の決裁者にどれだけ即アポを取れるか、個人営業の場合は富裕層顧客を何人抱えられるかを意識して、トップとの人脈を構築する力を身につけると良いでしょう。

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伊藤理子
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刑部友康/中恵美子

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