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「経理」専門エージェントが語るスキル・実力の測り方

求職者のスキルや希望に合った転職先企業を紹介してくれる「転職エージェント」。転職エージェントを利用する場合は、まずキャリアアドバイザーと呼ばれる担当者と面談をしてスキルレベルや希望を伝えるが、果たして自分のスキルがどのように見立てられて、どのように企業に売り込まれているのか、疑問に思ったことはないだろうか。今回は、専門エージェントの多い「経理職」に焦点を当て、日々どのように求職者に相対し、どのようにスキルレベルを測っているのかを詳しく聞いた。

2011年9月7日

<ADVISER>

株式会社VRPパートナーズ 代表取締役<br>
大谷幸宏氏

株式会社VRPパートナーズ 代表取締役
大谷幸宏氏

金融機関、人材紹介会社、エグゼクティブサーチ会社などを経て、2007年にアクチュアリーや公認会計士、税理士、企業の経理財務職など金融系スペシャリストに特化した転職エージェント「VRPパートナーズ」を設立。

ジャスネットコミュニケーションズ株式会社 紹介事業部 キャリアエージェント2課<br>
佐藤太郎氏

ジャスネットコミュニケーションズ株式会社 紹介事業部 キャリアエージェント2課
佐藤太郎氏

人材請負会社、技術系人材派遣会社などを経て2009年に公認会計士、税理士、企業の経理財務職など経理・会計等の人材紹介に特化した転職エージェント「ジャスネットコミュニケーションズ」に入社。

経理専門エージェントは、どんな方法で、初対面の「求職者」のスキルを測っている?

今回、経理職のスキルの見立て方を教えてくれた専門エージェント2社とも、求職者のスキルを見立てる「流れ」はほぼ一緒だった。専門性の高い経理職の場合、業務スキルが何より重視されるものと予想されたが、業務スキルのレベルだけではなく、コミュニケーション力、資格、語学力など多面的に測り、総合的に評価をしていることがわかった。以下で詳しい流れを説明していこう。

フェーズ1【業務経験とレベルのチェック】

求職者と企業のマッチングを測る際、やはり基本となるのは「業務経験」と「そのレベル」だ。この確認は、2社とも1時間程度の時間をかけ、じっくり行っているという。
VRPパートナーズでは、事前に履歴書と職務経歴書を提出してもらう。勤務先の業務内容や企業規模を確認したうえで、その人の役割や任されている仕事の範囲などをある程度予想しておくという。
「そして面談の場では、書類に書かれている一つひとつの業務を深掘りして聞いていきます。この業務は何人で手掛けているのか、役割は主か、補助か、任されている範囲は…などの質問で、その人がどれだけその職務に精通しているのかを測ります。また、併せて『苦労したこと』も聞くようにしていますね。エピソードを聞くことで、その業務に本当にメインで携わったのか、そしてどれほど深くかかわったのか…を確認することができます」(大谷氏)
ジャスネットコミュニケーションズでは、本人提出の履歴書、職務経歴書のほかに、業務レベルの詳細を測る「チェックシート」を用意している。例えば、「年次決算」ならば、決算見通し作成、減価償却計算業務、消費税等整理仕訳、取締役会説明…などと、さらに10項目ほどに分かれており、それらをメインで行ったのか補助で関わったのか、経験年数は何年か…などを求職者に聞きながら書き込んでいく。
「項目の数は、全部で100近くあります。かなり細かく分かれていますが、チェックの数が多ければ評価が高いというわけではありません。企業ごとに求めるスキルが細かく分かれているので、このチェックシートがあるとマッチングが測りやすいのです。例えば『上場会社で有価証券報告書の作成経験があり、連結決算もメインで3年以上関わった経験がある人』などという場合にも、これを見ればどなたが当てはまるか一目瞭然です」(佐藤氏)
なお、経験年数ごとに「できれば持っていてほしいスキルレベル」の目安は両社とも、5〜6年ならば月次と年次にメインで関わり、8〜10年ならば連結を一人で締めた経験、10年超になると、連結決算と税務申告書作成にメインで携わり、上場会社なら有価証券報告書の作成経験があるといい、とのこと。企業規模にもよるが、評価されるスキルレベルの目安として理解しておきたい。

フェーズ2【資格と語学力のチェック】

「リーマンショック以前は、公認会計士の資格を持っているだけで歓迎とする企業が多かったのですが、経済環境が変わったこと、試験制度の変更で合格者数が増えたことなどを受け、彼らの多くが希望する上場企業・グローバル企業への転職は、語学力などプラスアルファのスキルが必要となるケースが多くなっています」(佐藤氏)
「公認会計士など高難易度の資格は、資格そのものより、『より高い知識を得ようとする姿勢』を評価されることはあるかもしれません。なお、グローバル企業であればUSCPAやIFRS検定などは評価されるケースも多くあります」(大谷氏)
資格に関しての評価は企業によってまちまち。数年前に比べると、いくら難易度の高い資格を持っていても、それだけでは評価されなくなっている。
また近年、海外展開する企業の増加に伴い、英語力を重視する企業が増えているという。「今はまだ本格展開していない企業でも、将来を見据えて一定水準の英語力を求めるところが増えていますね。TOEICなら750点あれば高評価とされるところが多いです。ただ、すでに海外拠点があり、グローバル展開している企業の場合は英文財務諸表の作成ができるレベルが求められます」(大谷氏)
TOEIC点数はあくまで目安であり、実務でどれだけ使用しているかが、企業が重視しているポイントといえる。

スキル確認後…求人案件とのマッチングはどうやって行う?

以上のような方法で求職者のスキルレベルを見立てた後、いよいよ実際に求人案件が紹介されることになる。専門エージェントに多数集まっている求人案件の中から、どうやって求職者一人ひとりに合った求人を選んでいるのだろうか?

フェーズ3【求職者の志向とキャリアプランのチェック】

取材をした各社が「もっとも重視している」と回答したのが、「求職者の志向とキャリアプラン」だ。求職者本人が次の環境に何を求めているのか、どんな業務を任され、今後どんなキャリアを歩みたいのか…ということを大事にしてマッチングを図らないと、ミスマッチが起きやすく、結果せっかく入社した企業をすぐに辞めてしまう…というケースが少なくないからだ。
「志向は人によって異なります。同じスキルレベルの人でも、『忙しくてもいいから成長中のベンチャーでIPO業務に関わりたい』という人もいれば、『上場企業でじっくりと連結業務に取り組みたい』という人もいます。たとえ求職者と企業のスキルマッチングは図れていても、この志向の部分が合わないことには、結局は長続きせず、お互いにとって不幸ですからね」(大谷氏)
「採用するからには長く腰を据えて働いてほしい…というのは、すべての企業の願いです。そのため、本人の志向は何より重視するポイント。これからのキャリアプランを聞き出すだけでなく、過去の転職経験についても『何を求めてこの会社に転職したのか』を掘り下げて聞いていきます。たとえ転職回数が多い人でも、理由に一貫性があり、その人なりのストーリーが描けていれば、そのストーリーに合った企業に自信を持って推薦しています」(佐藤氏)

フェーズ4【外見・コミュニケーション力のチェック】

意外にも、面談に現れた時の求職者の雰囲気や表情、そして面談中のコミュニケーションの取り方についても、チェックされている。スキルのヒアリングからは見極められない、求職者の適性を理解し、活躍できそうな風土の企業を紹介するためだ。
「経理職は比較的内向的な人が多いですが、これからは経理といえども事務処理だけではなく、経営数値に変化があったら経営陣に進言したり、改革や改善の提案をする力が必要となります。そのため、経理としてのスキルだけでなく、さらにコミュニケーション力を兼ね備えている人が求められる傾向にありますね」(VRPパートナーズ・大谷氏)
「面談の場では、世間話などをしながらその人の会話力やコミュニケーションスキルを見ます。経理は、ほかのあらゆる部署と関わり、連携を取りつつ社内の動きをつかまねばならない立場。フットワークがよく、会話のキャッチボールができる人が、相対的に企業からの評価が高いですね」(ジャスネットコミュニケーションズ・佐藤氏)

希望に合った求人を紹介してもらうためには
「自分自身のキャリアプラン」を明確にしておくことが重要

転職エージェントでは、業務スキルのレベルだけを見て、登録者をランク分けして上から順に求人紹介しているわけではない。登録者のコミュニケーション力や勤務先に対する志向、キャリアプランなども細かく探り、あらゆる角度から「ぴったりマッチする企業」を見つけようとしていることがわかった。
「当社では、登録者面談には1時間から1時間半をかけ、じっくりその人のスキルや志向を探ります。そのうえで翌朝の会議で登録者一人ひとりについて共有し、各自が担当する企業の中でマッチングするところがあるかどうか話し合い、企業と登録者のマッチング度合いが最も高いと思われる組み合わせを見つけ出します」(佐藤氏)
いくらスキルレベルが高くても、次の環境で何がしたいのかが明確でない人には、求人は紹介できません。そもそもマッチングが測れず企業が紹介できないし、スキル条件だけで転職を決めても長くは続きません。そんな人には、まずは何がしたいのか、どんな仕事ならば興味を持てるのか、一緒に考えることから始め、方向性が定まってから求人を紹介しています」(大谷氏)
転職エージェントに相談に行く際には、自分の経験を棚卸してスキルレベルを洗い出しておくとともに、転職先で何を実現したいのか、どんな環境でどんなキャリアステップを踏んで成長していきたいのかも明らかにしておくと、希望に沿った環境に出会える確率が高まるだろう。

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伊藤理子
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早坂卓也/畑山亮太

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