反対意見を説得して新事業開発、赤字事業を黒字に転換…

逆境に挑み成功した30代ビジネスリーダーの「着眼と視界」

目標を達成するためにあらゆる努力や工夫を徹底的にやり切る、アイディアを形にするためにさまざまな挑戦をする――今のビジネスシーンにおいては、「何事も最後までやり切り、挑戦する力」が高く評価されている。今回は「周囲の反対や逆境にもめげずに自身の信じる道を突き進み、高い成果を挙げた」ビジネスパーソン2人にインタビュー。壁を乗り越えるために知恵を絞り、事業を推し進めたプロセスと「熱意の源」を取材した。

2011年7月20日

【バンダイ】この事業を成功させれば日本中の女の子が笑顔になる!
夢を明確に語ることで反対を乗り越え「女児向けセレクトショップ」を事業化

(株)バンダイ 富樫憲さん

株式会社バンダイ
ガールズトイ事業部ガールズスタイルチーム マネージャー
富樫 憲さん(37歳)

2007年7月よりバンダイが展開しているアパレル雑貨ショップ「ちゃおスタイルショップ」(東京・原宿、大阪、名古屋の3店舗)。小学校3〜6年生の女児の高い支持を集め、今月23日にはセレクトショップ「ちゃおガールセレクト」としてパワーアップする。実は、この小学校中〜高学年の女児層は、バンダイが強化したい層だった。玩具以外での新たな事業展開に当たってはさまざまな反対意見が上がったが、富樫さんは「思いを周囲に熱く語る」ことで周りを巻き込んでいった。

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2003年に「ガールズトイ」担当になった当初から、危機感を持っていました。女児は、小学校3年生ぐらいになると急におもちゃ売り場に来なくなる。興味の矛先が「おもちゃ」から「おしゃれ」に移るんです。
当社は、未就学女児向けには「プリキュア」、小学校低・中学年には「たまごっち」という強力なヒット商品がありますが、中学年以上のおしゃれに興味が移った女児向けの商品が明らかに手薄でした。少子化が進む中、ガールズトイ事業部の売り上げ縮小は目に見えています。「この状況を何とかしたい!」と考え、注目したのがコスメ分野。当時、子ども向けの化粧品が盛り上がりを見せ始めていたことに着目し、女児向け人気アパレルブランドとコラボしたコスメショップの出店を発案しました。
自信のアイディアでしたが、メーカーである当社が直営店を運営するのはかなりの冒険。「ジュニア向けコスメ」というニッチ分野であるうえ、直営店の運営ノウハウもなく先行コストもかかります。「そこまでお金をかけて、リスクのあるニッチ分野に進出すべきか?」との意見が続出しました。

周囲に納得してもらうために私が取った方法は、「ターゲット層のニーズをリアルに感じてもらう」こと。小学3〜6年生女児のコスメニーズについて、アンケートを取ったりグループインタビューを行うなどして綿密にリサーチしましたが、その模様をすべてビデオに録画し、「子どもたちがコスメに対して並々ならぬ関心を持っている表情、声、姿」を会議のたびに流し続けました。加えて、「目標を語り続ける」努力もしました。今までバンダイが弱かったこの世代にアプローチすることは、会社にとっても、ターゲットにとってもプラスになる!子どもたちの笑顔をもっと増やせるはず!と熱く語り続けることで、周囲も徐々に協力姿勢に変わってきたんです。

そして、満を持して2004年3月に渋谷にコスメショップをオープン。しかし、初めは反響を得られたものの、徐々に売り上げは右肩下がりとなり、3年後には事業撤退することに。コスメは「生活必需品」ではないうえに、「小学生にコスメを買い与えるのはまだ早い」と考える母親も多く、話題になった割には売上数量が伸びなかったのです。ただ、「小学校中・高学年のおしゃれに対する興味は非常に高い」ことはつかめたので、「保護者に受け入れられ、かつ365日使ってもらえるもの…例えば文具や雑貨、アパレルなどのショップにすれば売り上げも確保できるはず!」と考えました。
ただ、事業としては一度失敗し、赤字も出しています。改善点をまとめ、明確な成功イメージにつなげていくために何が必要か…と頭をひねってひらめいたのが、小学生女児に絶大な人気を誇るコミック誌『ちゃお』とパートナーシップを組むことでした。

それまで『ちゃお』とは、広告出稿以外ほとんどお付き合いがなかったのですが、すぐにアプローチを開始。「小学校3〜6年生の女児が集まれる場所って、世の中に意外にないんです。彼女たちが笑顔になれる場所を一緒に提供しましょう!」と編集部に訴え、協力を取りつけました。『ちゃお』という強力なパートナーの協力を事前に得たことで、経営陣には堂々とプレゼンができましたね。前回のマイナス要因をすべてプラスに変えることができると力説し、了承を取りつけました。

2007年7月の「ちゃおスタイルショップ」オープン日、原宿店には女の子たちが長蛇の列を作りました。興奮気味にお店に駆け込んでくる女の子の笑顔を見たとき、前回の失敗や今までの苦労がすべて報われる思いでしたね。現在では、大阪、名古屋の3店舗トータルで年間10万人が来店する人気店舗となりました。今回のリニューアルも成功させて、「進化版ちゃおスタイル」をビジネスモデルとして確立させ、全国の女の子を笑顔にしたいと考えています。

●困難を乗り越え、事業を推進していくために、必要なチカラとは?
まずは自分の夢や目標をどんどん語り、周りにも同じ思いを持ってもらうことですね。加えて、「会社に何らかの足跡を残したいという思い」が大切だと感じています。
私は、ビジネスパーソンである以上、「この事業は自分が手がけた、と胸を張って言えるものを生み出したい」と思っています。それだけのものを生み出すには、人が考えないこと、やらないことを率先して行わなければなりません。たとえみんなに「ムリだ」と言われても、それを乗り越えないことには、足跡は残せません。手掛ける仕事すべてを足跡にする!という意識を持てば、途中で目的を見失うことはなくなり、高いモチベーションが維持できます。
 

【ビューティーナビ】「個人の力を信じる」を徹底することで営業
担当者の意識改革に取り組み、大赤字だった事業を黒字に転換

ビューティーナビ(株) 西村広さん

ビューティーナビ株式会社
執行役員 サロン事業部長
西村 広さん(34歳)

美容室・ヘアサロンの検索サイト「Beauty-navi.com」は月間1300万PVを誇る人気サイト。しかし、2008年4月に西村さんが営業課長として入社したときには、月間650万PV程度しかなく、大赤字の事業だった。一刻も早い黒字化を実現するために西村さんが徹底したのが、「営業担当者の意識改革」だった。

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入社してすぐ、「赤字体質から脱却できないのは営業体制に問題がある」と気付きました。当時は、営業担当者が完全に個人プレーで動いていて、マネジメントもナレッジ共有も行われておらず、「売れる人は残るが、売れない人は辞めていく」という図式。立ち上げ期で、組織体制がまだ整備しきれていない時期とはいえ、人の入れ替わりがあまりに激しい状態でした。このままでいけば、できる営業が辞めてしまったら最後、売り上げも激減してしまいます。数人のスター営業に売り上げを頼るのではなく、個人の力を信じて伸ばし、「全体力」の向上を図ることが急務だと考え、その日から組織の改革に乗り出しました。

まず行ったのは、個人プレー体制からの転換。マネジメントに興味を持っていた3人をリーダーに据え、営業部を3チーム体制に変更しました。営業はいくら一人で頑張っても、上げられる売り上げには限界があります。一人が、自分の100のキャパを120に伸ばすよりも、そのプラス20のための努力や時間を部下の育成に割けば、チームとしてはより多くのリターンになります。その考え方を、リーダーに叩き込みました。
また、「この事業を行う意義」と「目標数字を達成する意味」を全員に根気強く訴えました。美容室はただ髪型を変えに行く場所ではなく、リフレッシュできたり元気になれる場所でもあります。営業一人ひとりが目標数字を達成することで、全国の美容室が元気になり、事業の黒字化も近付く。われわれの営業活動は、世の中にとって大きな意味があるんだということを、改めて認識してもらうようにしました。ここを握るだけで、営業の意識はガラリと変わるとは思っていましたが、中でも「ただ業務をこなすだけで売れていなかったメンバー」の意識が急変しましたね。目標達成に向けてできることをやり切る覚悟が、皆の中に生まれたと感じています。

一方で、私自身の立ち居振る舞いにも、気を配りました。いくら頭が良くても、仕事ができても、人間として信頼されないと人は付いてきてくれません。まずは私が、メンバーを信頼すること。そして、上司としての顔だけでなくときとして兄のように諭したり、友人のように相談に乗ったり…と、メンバーが岐路に立った時に最も安心できるような接し方をすること…を意識しました。
実は、これは前職の人材サービス会社での失敗から学んだこと。6年前、新たな営業拠点の立ち上げを任されたとき、私は拠点を早く軌道に乗せることしか考えられませんでした。結果、部下との会話は売り上げ数字の話のみ、成果を出せない営業には「なぜできないのか」と詰問するばかりで、気づけば一人、また一人と部下が辞めていく結束力のない組織になっていたんです。このときに組織の在り方、コミュニケーションのあり方を真剣に考えましたね。このときの失敗が、私の原点になっています。

以上のように、「営業担当者の意識改革」といっても、何か特別なことをしたわけではありません。チームマネジメントを強化して、一人ひとりと目標を握り、プロセスを見ながらフォローする…どの会社もやっているようなことだと思います。しかし、その「当たり前のこと」が、3年前の当社には欠けていたんです。「営業をやらされている」から「目標に向かって自らやり切る」と当事者意識に変えるだけで、メンバーの営業の効率もぐんと向上しました。編集・制作担当者によるコンテンツのブラッシュアップや、開発担当者による機能改修の努力・工夫も功を奏して、間もなく単月黒字となる月が出始め徐々に定着。昨年10月以降はずっと黒字を維持しています。また、この2年間で営業担当者は一人も辞めていません。これが何より嬉しいですね。

●困難を乗り越え、事業を推進していくために、必要なチカラとは?
「周りを信じること」だと思います。「やり切れていない」人はだいたい独り相撲を取っていることが多い。一人で考えて行動し、一人で完結してしまう。自分ひとりだと反省点が見えないから、マイナスも修復できずに中途半端で終わってしまうんです。人間、一人でやれることには限界があります。周りを信じ、わからないことは聞いてみる、頼ってみる、そうすれば、新たな視点が得られるし、自分の「限界点」が広がることで「やり切る」までの時間も距離もぐんと縮まるはずです。私の場合は、営業の考え方と方向性は指示しましたが、メンバー一人ひとりのやる気と可能性を信じました。その結果、皆が協力し合いつつ自走もできる組織に近つけたのだと思っています。
一人で達成したら、嬉しいのは自分だけ。でも、周りを信じ、周りを巻き込んだ結果の達成は、周りもみんな嬉しい。そのほうが、毎日が断然楽しくなると思いますよ。
 

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