究極の「集約と共有」で、TCOの大幅削減を実現する

パブリック&プライベート、クラウド構築の最適解を探せ!

ますます加速する企業のクラウド導入の動き。その中で今回注目したのは、「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の使い分け。両者の特徴をとらえた上で、それぞれどのように活用していくのがベストマッチングなのか、専門家にうかがった。

2011年7月13日

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筑波大学 大学院 システム情報工学研究科<br>
コンピュータサイエンス専攻 教授 <br>
加藤 和彦氏

筑波大学 大学院 システム情報工学研究科
コンピュータサイエンス専攻 教授 
加藤 和彦氏

1985年、筑波大学第三学群情報学類卒業。1989年、東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。1992年、博士(理学)(東京大学)。1989年、東京大学理学部情報科学科助手。1993年、筑波大学電子・情報工学系講師、1996年、同助教授、2004年より筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻教授。オペレーティングシステム、仮想計算環境、分散システム、セキュリティに興味を持つ。JST CREST「自律連合型基盤システムの構築:サステーナブルシステム」(代表、2003〜2008年度)、文部科学省 科学技術振興調整費「高セキュリティ機能を実現する次世代OS環境の開発:セキュアVM」(代表、2006〜2008年度)、IPA未踏プロジェクトPM (2003〜2005年度、2008〜2009年度)、総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)「ディペンダブルな自律連合型クラウドコンピューティング基盤の研究開発」(代表、2009〜2011年度)

パブリッククラウドとプライベートクラウドとは?

パブリッククラウド:一般の利用者を対象に提供されるクラウドサービスで、プライベートクラウドという名称が登場するまで、クラウドと言えばパブリッククラウドのことを指す。アマゾンやグーグル等の企業がパブリッククラウドサービスの代表的な提供企業。
プライベートクラウド:企業が自社内でクラウドコンピューティングシステムを構築しつつ、主に企業内の各部門やグループ企業などに限定して提供するクラウドサービスのこと。クローズドサービスであるため、パブリッククラウドに比べセキュリティ面での優位性がある一方、システム構築や運用などにかかるコストは高い傾向がある。

クラウドの本質である「集約と共有」を一気に推進することで、コスト&運用負担の大幅削減を目指す

コスト&負担面でスケールメリットを享受できるパブリッククラウドに対し、導入時に手間がかかるプライベートクラウド

本格的にクラウドが普及しだしたのが2009年ごろ、アマゾンやグーグルが先行して個人ユーザーをメインターゲットに展開し始めました。その一方、ビジネス面において早くからSaaS形式でクラウド化を全面的に活用したセールスフォースの成功を受けて、「ビジネスクラウドは成功する」との認識が一気に広がります。その結果、例えばIBMは2009年、「エンタープライズ向けデータセンターはクラウドで行く」と宣言するなど、一気にクラウド化の波が世界的規模で波及したのです。

そこで今回のテーマである「パブリック」と「プライベート」、2つのクラウドの話になるのですが、先行して普及が進んだのは「パブリッククラウド」。普及が進んだ理由としては個人ベースでアカウントを設定でき、巨大なプラットフォームをシェアできるため、導入が簡単でなおかつコストも安いこと。地図ソフトやメールクライアント、パッケージソフト等パブリッククラウドで急速に普及したこれらのコンテンツはすべて、パブリックならではのスケールメリットを最大限に享受しているといえるでしょう。

逆にプライベートクラウドやコミュニティクラウド(特定の企業によって形成する「コミュニティ」でデータセンターの共同利用などで運用されるクラウド。パブリッククラウドのようにセキュリティに対するリスクを解消しつつ、プライベートクラウドのようにある程度の柔軟性やコスト削減効果も期待できる。パブリックとプライベート両者の中間に位置するクラウド形態)の場合、会社の組織単位で導入するため、社内の各組織で事前にクラウド化していいのかどうかという合意形成プロセスが必要なため、これまでのように各部署それぞれの判断でサーバを設置するのに比べて、手間がかかるのです。

プライベートクラウド最大のメリットは「TCO」の削減

そのためパブリックに比べて導入が遅れたプライベートクラウドですが最近、大手ITベンダーを中心に積極的にプライベートクラウドビジネスを展開しています。ではなぜ今、プライベートクラウドの導入が進んでいるのか?それは「TCO(トータルコストオブオーナーシップ)」、つまり各種IT資産を所有することに伴うトータルコストの点において、プライベートクラウド化することが大きなメリットとなるからです。

ITエンジニアの方ならご存知だと思いますが、企業のシステムは非常にコストや手間がかかるもの。ハードや各種ソフトウェア、OS、DB、アプリなどの導入やメンテナンス、一定期間経過したらリプレイス作業、またセキュリティ対策やマシン管理に関わる人員確保など多岐にわたります。
また情報量の飛躍的な増大に伴い、ここ数年でいわゆる“ムーアの法則”に倣ってマルチコアの高性能サーバが安く手に入るようになったこと。それによって特に大企業において運用するサーバ台数が増えすぎてしまったことで運用管理負担が増大していたことも、大きな課題となっていました。
そこでプライベートクラウドを導入することによって、クラウドの本質である「集約と共有」を仮想化によるサーバコンソリデーション(統合)を通して徹底的に実施します。その結果、各種ITリソースの有効活用によって、コストや運用負担の大幅な削減が可能となるわけです。

今後数年、「コスト」「セキュリティ」「運用リスク」の観点でパブリック&プライベートクラウドの使い分けが進む

巨大データセンターを自前で所有する大企業を中心に、プライベートクラウドを本格導入

では実際にどのような企業が率先してプライベートクラウドを導入しているのか。まずひとつは自前で大きなデータセンターを所有している大企業が挙げられます。わざわざ外部のパブリッククラウドを活用しなくとも、自前で施設を所有しているのであればクラウド化によって合理的なアーキテクチャを再構築した上で運用しようと考えます。
またもう一つは「外に出したくないシステム」のケース。例えば基幹系システムやセキュリティレベルの高い個人情報を大量に管理するメガバンクなどは、パブリッククラウド化することのリスクを嫌っているケースが多いのが現状です。そのリスクとは、セキュリティ以外にはシステムがダウンしてしまうというリスク。
ただし最近ではパブリッククラウドやコミュニティクラウドの信頼性は向上しつつあり、それらを利用するケースも増えています。その例として日本郵政株式会社(JP)がセールスフォースのCRMクラウドサービスを導入したり、ERPで有名なSAP社では、同社の製品をAmazon EC2での利用を可能にさせる方針を発表しています。またすでに一部の企業では、基幹系の一部分のシステムに関して、パブリッククラウドを活用しているケースも見受けられます。

つまり、クラウド化する情報の質や量を見極めながら、適材適所でクラウド形態を混合した、ハイブリッド型で導入する企業が多いのが現状です。
例えば静岡大学のように、立地環境が東海地震の発生するリスクが高い地域であるため、東京都内にあるパブリッククラウドと、静岡県内にあるプライベートクラウドを併用することで、リスク分散を図っているケースもあります。
今後パブリックとプライベートの連携はより進み、両者をうまく活用するための最適解が見えてくるはず。しかしその最適解が見えるまでの基本的な動きとしては、非常に重要でセキュリティレベルの高い情報システムは従来型のオンプレミス、もしくはプライベートクラウドで、またデータボリュームが大きくなおかつ、セキュリティレベルが比較的低いものはパブリッククラウドを活用していく流れが、当面続くと見られます。

クリエイティブな能力を持つエンジニアこそが、クラウドの持つ巨大な潜在能力を引き出せる

パブリックとプライベート、それぞれのメリットやデメリットを考慮しながらどのシステムをどうクラウド化していくのかを見極めることが重要になってきます。特にここ数年のハード・ソフト両面における飛躍的な進化によって、「マンパワーとマシンコストを節約しながら、より高い生産性を生み出す」という点を極限まで追求できる環境がすでに私たちの目の前に用意されている状況。そのため、クラウド化に直接関わるエンジニアにとって、高度化したクラウド環境をどれだけ深く理解した上で使いこなせるかが今、問われているのです。

そこで今後、本格的クラウド時代を迎えてパブリックとプライベートを使いこなしていく、クラウドのプロになるために必要なのは「クリエイティブ能力」です。顧客が要求するネットサービスを自分のアイディアを駆使してデザインできる力と、その力を元にクラウド化していく技術力。従来の技術力にデザイン力を組み合わせることで、まだ明確に見えていないパブリックとプライベート、両クラウド活用の最適解を導き出すことが期待されているのです。

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