satisfaction guaranteed、Z会、2つの成功事例から探る

「ネットマーケティングのプロ」の着眼点

企業の宣伝活動のため、ブランディングや売り上げ向上のため、ネットを駆使した効果的なマーケティングはあらゆる業種、職種で必須となりつつある。そして、ここ数年の急速なソーシャルメディアの台頭により、マーケティングの手法も大きく変わろうとしている。そこで今回は、ネットやソーシャルメディアをフル活用して実績を挙げている2社にフォーカス。それぞれの「仕掛け人」に、「ネットマーケティングのプロ」に求められる視点と資質を聞いた。

2011年5月25日

【satisfaction guaranteed】社員数16名の会社のアパレルブランドが、
facebookを活用したアジア戦略で35万人ものファンを集める

株式会社エスワンオー 佐藤俊介さん

株式会社エスワンオー
代表取締役社長兼最高経営責任者
佐藤俊介さん(32歳)

企業がfacebook上でブランド認知向上などのために活用している「ファンページ」。現状では、国内大手企業レベルでも数千人単位のファン数であるのに対し、アパレルブランド「satisfaction guaranteed(サティスファクションギャランティード)」は35万人ものファンを持つことで知られる。この数字は、国内では断トツの1位(2位はユニクロの22万人)。世界で見ても、ファッションブランドでのファン数ランキングは、エルメスやDKNYなどの名だたるブランドを凌いで52位となっている。(2011年5月25日現在)そして、ファンの97%は、日本以外のアジア人だという。同ブランドを展開するのは、社員数16名のネット広告代理店エスワンオー。すべての策を、ずっとネット畑を歩んできた佐藤社長が仕掛けた。

●アジアでブランドを低コストで知らしめるには、facebookが最適だった
ネット広告代理店として創業したのが2006年、そしてアパレルブランドを立ち上げたのが翌年の2007年のこと。
企業のブランドビルディングの過程で、ファッションやデザインが大きく関わる場面が多いことから、かねてからアパレル分野に注目していました。加えて、アジア地区で「メイドインジャパン」ブランドが好まれていることは知っていたので、「日本ではなくアジアにターゲットを絞り、新事業を展開しよう」というアイディアに至りました。シンガポールを中心にアジア各国のファッション誌を見たり、現地の情報サイトなどをチェックして、日本のファッションブランドが非常に多く取り上げられていることを確認。アジアでの「勝算はある」と判断しました。
facebook内にファンページを作ったのは、わずか1年前の2010年3月のこと。facebookは、当時は日本での普及はまだこれからでしたが、日本以外の海外各国ではすでに爆発的にユーザー数を増やし、ソーシャルメディアとしての地位を確立していました。アジア展開をもくろむのであれば、facebookを使えば直接現地で宣伝活動を行うよりも短期間で効率的にPRすることが可能だと考えました。

そこでfacebook上でターゲティング広告を打つ一方で、ファンページ上であらゆる工夫をしてファン数の拡大に注力しました。「イイネ!」ボタンをクリックする人は、当社の服を買いたい人ばかりではなく、「ページが面白いから、かっこいいから」という理由でクリックする人もたくさんいます。ページの見え方や、ファンとのコミュニケーションの取り方など、さまざまな手を打ってみました。ユーザーへのメッセージは、いろいろな視点で数十パターンは試したと思います。一見、気付きづらいかもしれませんが、「いつファンページに遊びに来ても新しく、新鮮」との印象を与えるようにしました。

その結果、現在は35万人にまでファンを増やすことに成功しています。ただ、この35万人はあくまで「ファン」に過ぎず、すべてが当社の「顧客」ではありません。このファンをいかにして1人でも多く「顧客」に変えていくか、が重要。「facebookのファンの顧客化」は世界的に見てもほとんど実例がないため、1から知恵を絞るしかありません。その打ち手の一つが「実店舗の出店を積極化して、ネットとリアルの融合を進める」こと。まだほんのさわりではありますが、facebookに新しくできたクエスチョン機能を使ってTシャツの人気アンケートを取り、国別に好みの傾向を取ってモノづくりに反映するなどの策を取り始めています。今後、このネットとリアルの融合が順調に進められれば、パラダイムシフトが起こるはず。大手外資アパレルブランドが100年かけて築いてきた地位に、ネットの力を使えばものの数年で到達できるかもしれない。そのために、これからも地道にトライアンドエラーを繰り返していきたいと思っています。

●ネットマーケティングのプロとして努力していること
あらゆるネットにおけるツール、メディアを使い倒すことです。mixiもTwitterもfacebookも、初めは個人ユースでスタートし、あらゆる機能をとにかく使いまくって、トライアンドエラーを繰り返してきました。例えばfacebookならば、個人ページの画像を毎日変えてみると友達申請は増えるのか、プロフィールをどんどん書き足していくと?ウォールのコメントを変えてみると?…などいろいろなことを試しては、自分なりの「人を呼ぶ成功パターン」をつかむ。失敗も含めた「経験」の数が、ネットマーケティングにおける価値であり、仕事における引き出しの多さにつながります。
今は、山のようにネットマーケティングに関する本が出ているけれど、読んで「知った気」になっている人がなんと多いことか。ネットの世界は生き物であり、使う人、使う企業、その時の環境によって反応や得られる効果は変わってくる。本のノウハウがそのまま活かせることはありません。自分で体感して「自分で成功事例を作る」気概がないと、ネットマーケティングのプロとは到底言えないと思います。

【Z会】Twitterを使って、大学合格者の喜びの生声をレポート。
社員の「おめでとう」の声をかぶせて、企業ブランディングに成功

株式会社Z会 溝呂木 聰さん

株式会社Z会
営業部広告宣伝課 Web・宣伝統括担当主任
溝呂木 聰さん(34歳)

通信教育のZ会では、2010年に全国主要大学の前期入試合格発表日に、合格したばかりの受験生の喜びの声をTwitterで流すという「合格報告会inTwitter」を実施。社員による「おめでとう」のツイートを交互に入れることで、受験生に親身になってくれる会社、応援してくれる会社としてのブランディング確立につなげた。ネットマーケティング担当者としてこのイベントの企画から携わったのが、溝呂木さんだ。

●一人ひとりの努力を誉めたたえたいという素直な思いから生まれたアイディア
2009年、TwitterやFacebookなど、さまざまなソーシャルメディアが台頭してきたことを受け、これらを何かに活用できないか?と、ネットマーケティング担当者が集まったのがきっかけです。企業PRにつなげるとともに、会員である受験生にも喜んでもらえるような企画を…と全員がアイディアを出し合い、意見を集約して生まれたのが「Twitterを使っての合格つぶやき」でした。この日を迎えるまでに、受験生は並々ならぬ努力を続けてきました。心からの喜びを、思う存分叫んでほしいし、それを専用のハッシュタグをつけてツイートしてもらえば、話題になると考えたんです。

ただ、アイディアを詰めていくと問題点が出てきました。当時はまだ、高校生がTwitterを使いこなしている例は少なく、自主的にどんどんつぶやいてもらうのは難しいと予想されました。また、今までも全国の主要大学の合格発表日に出向き、会員の喜びの声を集めることを恒例行事にしていたので、合格の喜びに沸いている学生に、わざわざハッシュタグをつけてつぶやくことを強いるのは難易度が高いということも、肌でわかっていました。
そこで、主要大学の合格発表会場に社員が出向き、合格者の声を社員が代わりにツイートするという方法で問題を回避することに決定。一方で、このイベントをプレスリリースで告知し、東大・京大など7大学以外の合格者および会員以外の合格者には自主的に呟いてほしいと呼びかけました。
Twitterブームに乗ったからこそ、この試みは「Twitterを使った新たなプロモーション」として多くのメディアに取り上げられ、事前に広く注目を集めることができました。

当日は、総勢50人の社員を動員。われわれは各大学に出向き、声を拾ってはその場で140文字にまとめてツイートしたり、まとめて本社に送って本社スタッフがそれぞれをツイートするなど作業を分担。臨場感ある声をできるだけ多く、リアルタイムで流すべく努力しました。そして、当日のサプライズとして、各喜びの声1つ1つに社員の「おめでとう」の声をかぶせる形で掲載しました。
Twitterは、第三者が個人のやり取りを自由に閲覧できるという特徴があります。そこに注目しました。合格者に「自分に対しておめでとうのメッセージがもらえた」と喜んでもらえるだけでなく、傍から見ている第三者にも「Z会は一人ひとりの合格者に対してメッセージを送ってくれる温かい会社だ」という印象を持ってもらえるという効果が期待できます。1年後に受験を控えている学生にとっても、大きなモチベーションになります。

実際、イベント後は問い合わせや資料請求数がぐんと増えました。ただ、このブランディング効果は実は「結果的に付いてきた効果」。PR効果はもちろん求めてはいましたが、一番の目的は、「合格した会員全員に、直接ねぎらいの言葉を掛けたい」という素直な思いから。それが実現できるフィールドが、ネット上にあったから活用したということなんです。
このように、一般消費者の方が見たときに、「楽しい」「役に立ちそう」と思ってもらえるWeb展開を第一に考えています。売り上げへの連動や、費用対効果などを考えたとたん、どうしても「広告臭」が強くなる。それよりも、面白いと思ってもらえれば、メディアや個人ブログで紹介されたり、Twitterで拡散されたりと勝手に広まっていく。それだけでブランディングになります。

●ネットマーケティング担当者として努力していること
当社のリソースを使って、一般の方に楽しんでもらえる新しい試みをどんどん実行し、数年後につながる種をまくことです。そのリソースとは、「会員である高校生の動向や気持ちを知り尽くしていること」。普段から会員である学生の気持ちを考え、実際に合格発表の現場に赴いて生の声に触れるなどして情報収集しているからこそ、今回のTwitterでのイベントも成功したのだと思います。
また、ネットマーケティングに関するセミナーには積極的に参加し、新しい情報を収集しています。セミナーの内容もさることながら、そこで得られる人脈が私にとってはとても重要。メーカー、商社など異なる業界のマーケティング担当者と情報交換していると、ヒントをたくさん得られる。マーケティング担当者としてのヒラメキをもらえますね。

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伊藤理子
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内井隆晶/早坂卓也

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