Facebook、Twitter、mixi…

ソーシャルメディアの急拡大は、雇用市場をどう変える?

「ソーシャルメディア」とは、mixiやTwitter、そしてFacebookに代表されるように、ユーザー同士がネット上で双方向にコミュニケーションを取ることができるWebサービスのこと。これらソーシャルメディアの急速な台頭により、日本のビジネス構造が大きく変わろうとしている。Facebookが本格普及するだろうこの数年で、われわれの仕事のあり方はどのように変化するのだろうか?今後の見通しを専門家に聞くとともに、Facebookを迎え撃つmixi、Twitterの戦略を聞いた。

2011年2月9日

【ソーシャルメディアの現状〜見通し】mixi、Twitterの定着、
Facebookの急速な普及で、数年内に社会構造が大きく変わる!?

現在、国内で最もアクティブ会員数(月1回以上訪問した会員)が多いと言われているのが、mixi、Twitter(ともに推計約1500万人)。一方、Facebookは月間訪問者で約300万人、アクティブ会員が約200万人と、現状ではまだ大きな差がある。しかし、「世界的に見れば、6億人のアクティブユーザーが存在する巨大メディア。すでに100カ国以上で普及しており、おそらく今後は日本でも他国と同様、主流になる」(ループス・コミュニケーションズ代表の斉藤徹氏)という。
すでに定着しているmixi、Twitterに、Facebookの勢力が加わることで、ソーシャルメディアは一気に普及拡大する見通し。それに伴い、社会構造やビジネスの構造をも大きく変わると見られている。一体、どんなビジネス・仕事が台頭し、どんなビジネス・仕事が「取って代わられる」恐れがあるのだろうか?

【専門家の見方1】「会社依存型の社員」は滅び、会社に属しながらも
ソーシャルメディアを駆使して自己発信できる「自立型社員」が生き残る

(株)野村総合研究所 山崎秀夫氏

(株)野村総合研究所/社会ITコンサルティング部 システムコンサルティング事業本部 シニア研究員
山崎秀夫氏
専門領域は情報戦略論、情報組織論、ソーシャルネットワーキング研究など。日本ナレッジマネジメント学会の専務理事も務める。『Ustreamと超テレビの時代』(インプレスジャパン)など著書多数。

日本でもソーシャルメディアが普及してきた…と言いますが、まだまだこれから。アメリカでは、2008年の大統領選で、オバマ陣営がソーシャルメディアを駆使して選挙戦を戦ったことで、爆発的に普及・定着しました。全国民が関わるビッグイベントは、選挙以外にはそうありません。日本でも次の総選挙に使われれば、一気に普及拡大すると思います。私は遅くとも2015年には国内に完全定着すると見ています。
それに伴い、われわれの「仕事のかたち」も大きく変わるでしょう。いわゆる「従来型の会社員」的な働き方は早晩滅び、個人個人が自立してフリー化するという動きが高まるでしょう。その動きが早いのは、情報、アイディア、デザインに関わる仕事、音楽などの自己表現に関する仕事、新聞や雑誌などのマスメディア、ITエンジニア・プログラマーなどの、いわゆるクリエイター分野。例えばアメリカのミュージシャンは、FacebookやUstreamで音楽会を行うなど、個人でどんどん情報発信を行い、楽曲1曲やグッズ、チケットを売るという形式で生計を立てています。レーベルに属さなくても無料で自ら発信できる。コストと創造性が両立できるのです。
エンジニアもしかりです。エンジニアももともと、クリエイティブな職業。社内でミッションとして与えられて作るものと、個人的に作りたいものは違う…という人は多いはず。そういう人が、自分が作りたいものを作り、アップス(アプリ)で稼ぐという動きが高まるでしょう。企業年金の減額問題などを背景に、企業は社員の副業を認めざるを得ない時代がやってくると見られ、「アップスで副業」という例は増えるはず。このように、会社に属している「自立型社員」が、あらゆる業種で増えてくると見ています。ソーシャルメディアを使って、ビジネスパーソンが自ら発信し、副収入を得ることができれば、仕事に対するモチベーションも上がります。ビジネスパーソン一人ひとりが活性化することで、社会全体の活性化につながると期待されます。
当然ながら「組織にぶら下がっている人、会社に寄りかかっている人」は、これからの社会で生き残れません。個人として力を発揮していくには、「ソーシャルメディアを最大限活用してコミュニティをどんどん作っていける力」が必要です。自ら発信し、人脈を広げていけば、自分を支持してくれる人に出会える可能性も高まる。その結果、行動選択肢が広がり、可能性だってぐんと広がる。それがソーシャルメディアの最大のメリットなのです。

【専門家の見方2】ソーシャルメディアに精通した運用、Web制作担当者の
ニーズ拡大。デジタルネイティブ世代が強みを発揮できる時代が来る

(株)ループス・コミュニケーションズ 斉藤徹氏

(株)ループス・コミュニケーションズ/代表取締役社長
斉藤 徹氏
企業向けSNS構築やソーシャルメディアに関するコンサルティング事業を幅広く展開。近著に『ソーシャルメディア・ダイナミクス』(毎日コミュニケーションズ)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)。

ソーシャルメディアの普及により、企業のマーケティング予算が変化します。今までマスメディア中心だった予算のうち、一定の割合がソーシャルメディアにシフトしていくからです。それにより、「ソーシャルメディアを使うクライアント企業」と、「そのクライアント企業から委託される周辺業務」において、雇用ニーズが増えると予想されます。

●ソーシャルメディア活用でWeb制作、運用担当者のニーズが増える
従来は、一般ユーザーが自社サイトに流入するルートは、バナーやSEO、リスティング広告などがメイン。しかし足元で、そのルートが大きく変化し始めており、現在は検索エンジンからに近いぐらい、ソーシャルメディアからユーザーが流入しています。この流れを受け、企業においてはソーシャルメディアに精通したWeb制作担当者、システム開発担当者のニーズが増えるでしょう。
また、ソーシャルメディアに関する「企業内の運用担当者」のニーズも増えるでしょう。双方向のコミュニケーションが必要なソーシャルメディアにおいては、ただファンページを作るだけではダメで、ユーザーときちんと交流し続ける必要があるからです。
企業側のニーズを受けて、ソーシャルメディアの特性を理解してトータルな戦略を練ることができるコンサルタントのニーズも高まるでしょう。従来のマスメディアを使ってアテンション、インタレストを行い、ソーシャルメディアで口コミに乗せて評判を広めていく…などといった「マスメディア」と「ソーシャルメディア」を融合したトータルなコミュニケーションデザインを設計できる人材は、高く評価されます。一方で、「企業と媒体を仲介して利ざやを取る」という、従来型の広告代理店業務は衰退を余儀なくされるでしょう。企業のソーシャルメディアへのシフトにより、リスティング広告やバナー、SEO周りのニーズも、相対的に減ると見られます。

●「デジタルネイティブ」世代に脚光。若手にも活躍の場が広がる

そんな中、最も強みを発揮できるチャンスがあるのは、「デジタルネイティブ世代の若手」。社会人1〜2年目の若手ビジネスパーソンは、物心ついたときから周りに携帯やネット環境があったはず。ソーシャルメディアリテラシーが高く、ネットワーク上でどのようにコミュニケーションを取れば円滑に進むのかを、感覚的に理解しているでしょう。ソーシャルメディアの分野でいえば、入社10年以上のベテランよりも、新人のほうが即戦力だったりします。だからこそ、若手はもっと積極的にソーシャルメディアを活用して、会社に対して自分の強みを最大限にアピールしてほしいですね。

このように、近い将来に影響が出てくるのは以上に挙げた仕事になりますが、中期的にはその限りではありません。企業とソーシャルメディアは切っても切れない関係になる…という時代がすぐにやってきます。どんな業種・職種の人であっても、ソーシャルメディアに慣れ親み、その特性を知っておくことが、ビジネスパーソンとしての必須条件になってくるでしょう。

【mixi/Twitter】ソーシャルメディア2社が語る
「今後の戦略と、増える役割・欲しい人材」

既存産業にmixiの持つソーシャルグラフを掛け合わせ、新たな価値を生み出す。
あらゆるものごとを、友人知人とともに楽しめる時代にする

(株)ミクシィ 高橋寛行氏

株式会社ミクシィ
経営推進本部 人事部 人材開発グループ 中途採用チーム
高橋寛行氏

ミクシィ社が目指すのは、mixiのソーシャルグラフ(mixiでつながる友人知人との関係)を心地よいつながりにすること。その上で、そのつながりをほかのサービスや家電、機器などにも提供し、新たな価値を世の中に提供していきたいと考えています。
今まで一人でしか利用することのできなかったサービスやものごとも、mixiのソーシャルグラフをかけ合わせることで友人と一緒に楽しむことができるようになります。例えば、ネットショッピングをするとき、一人でほしいものを選んで買うというのが普通でしたが、そのネット通販サイトで、mixiでつながる信頼できる友人からお勧めされたり、ギフトし合おうという気になったりと、人の感情を動かし、友人と一緒に買い物をしているような感覚を楽しむことができるようになります。これがmixiが持つ、大きな価値です。
昨年9月、新プラットフォームを公開し、mixiのソーシャルグラフは、さまざまなサイトやサービスで利用できるようになりました。すでに大手ニュースサイトや通販サイト、またスマートフォン端末用のアプリなどにも利用され始めています。あらゆるサービスやものごとが、友人・知人とつながった状態で利用できる時代が来ることを目指しています。そのためにも、mixiのソーシャルグラフを心地のよいものにしていくことが必須なのです。

リアルな既存サービスとの連携を考えられる「デジタルネイティブ世代」を求む

これらの実現のためには、ソーシャルというものを肌感覚で理解できる「デジタルネイティブ」な人材も必要不可欠。例えば、「ミクシィ年賀状」のように、リアルな既存サービスと連携して新しい価値を発揮するといったことも、どんどん考えていかねばなりません。Web上でも友人とつながっているという感覚を理解し、そこに可能性を見出しているデジタルネイティブ世代であれば、若くてもすぐに戦力になり得ます。
エンジニアであれば、プラットフォームの公開で、今後ますますmixi外のサービスと連携し情報の行き来が盛んになるので、APIを開発するスピードや認証やセキュリティ技術に長けた人も求められますね。
今後、あらゆる産業において、ソーシャルグラフを活用した事業展開が行われ、SNSが果たすべき役割はますます拡大していくでしょう。

Twitterはつぶやいても、見るだけでも、使い方は自由。リアルタイムの
情報ネットワークという立ち位置を明確にして、あらゆる「情報のハブ」に

(株)デジタルガレージ 佐々木智也氏

株式会社デジタルガレージ
上級執行役員 TwitterカンパニーEVP
佐々木智也氏

Twitterは、「リアルタイムの情報ネットワーク」。今、この瞬間に何が起きているのかがわかるツールであって、何をつぶやいてもいいし、当然見るだけでもいい。使い方はユーザーの自由です。そのため、いわゆるソーシャルネットワークとは性格も立ち位置も違います。
Twitterがあらゆる情報をつなぎ、広めていく。そんな「情報のハブ」という役割が、今後さらに強まっていくと考えています。
例えばマスコミでは、まずTwitterで情報収集を行い、その後に裏づけ取材を行う…という記者が増えています。現場のリアルなつぶやきから一次情報を得るのが一番早いからです、また、Twitter上でアカウントを持ち、Facebookでもファンページを持つ企業は多いですが、自社サイトとファンページを、Twitterを介して行き来させるという手法を用いている企業も増えています。
昨年1年間で、ユーザー数は急速に増えました。個人もそうですが、「ブランディングに役立つ」との視点から、企業のアカウントも急増しました。現在は、「カスタマーサポートや販促につながる活用をしていこう」という動きが高まっていると感じますね。そのためにも、ユーザビリティを向上させるとともに、ユーザー数をさらに増やす努力を続け、「情報のハブ」としての役割をさらに強化したいと考えています。

シンプルな機能を活かして、さまざまな連携を考えられる人材が必要可決

現在は都心のユーザーが大半なので、地方ユーザーを増やすことも重要な戦略の一つ。例えば、エリアごとのお買い得情報を流すとか、公共サービスとの連携を図るなど、地域に密着した展開を検討中です。また、アメリカのTwitterでは、1つのツイートに関連した別のツイートを表示したり、フォローしている人の傾向を分析してお勧めの企業アカウントを紹介していますが、これらに加えて、外国語のツイートを自動翻訳する、フォローしている人のレコメンド商品を表示する…など、ユーザーにとって新たな発見につながるような機能を、日本でも積極的に取り入れていこうと考えています。
そのため、常に「ユーザーにとって役に立つサービスとは?」を考え続け、実現のために挑戦し続けられる人材が必要不可欠です。FacebookやmixiなどほかのSNSは実に多機能ですが、Twitterは140文字のテキストオンリーと実にシンプル。だからこそ、ユーザーから見た場合の参入ハードルが低いですし、シンプルだからこそ発想次第ではどんなジャンルのサービスとの連携も可能です。当社が評価するのは、「ファーストペンギンスピリット」。群れの中で最初に海に飛び込むペンギンのように、何があるかわからない世界に飛び込む勇気を称賛する社風ですので、さまざまなことに臆せずトライできる人とともにいろいろな可能性に挑戦していきたいと思っています。

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