「日本企業のアジア進出加速」で雇用活性化!

アジアビジネス拡大企業が求める人材要件

国内景気の先行きが読みにくい中、アジアの経済成長が今後の日本企業のビジネスの大きな柱になってくると予想される。実際、中国をはじめとするアジアに進出する企業が急増中だ。どんな業界、企業が、アジア展開をしているのだろうか。そして、今後の雇用にどんな影響を及ぼすのだろうか?識者に見通しをうかがうとともに、実際にアジア進出を積極化する企業にも意見をもらった。

2010年11月24日

<ADVISER>

(株)日本総合研究所 総合研究部門 経営戦略クラスター 主任研究員/徳岡拓氏

(株)日本総合研究所 
総合研究部門 経営戦略クラスター 主任研究員/徳岡拓氏

(株)リクルートエージェント グローバル事業開発部アジアグループ/吉岡綾子氏

(株)リクルートエージェント 
グローバル事業開発部アジアグループ/吉岡綾子氏

消費のボリュームゾーンである「中間所得者層」が急拡大。
現地での市場獲得を狙ってあらゆる業界がアジアに進出

経済成長を背景に低所得者層の生活レベルも底上げ、消費力は膨大に

著しい経済成長が続くアジア各国。中間所得者層が増え、消費のボリュームゾーンがどんどん大きくなっている。そのマーケットを取りに行くべく、さまざまな企業がアジア進出を目指している。
「当社にはさまざまな業界から、経営戦略に関するコンサルティング案件が集まりますが、特にアジア進出の依頼が増えています。アジア各国の景気回復を受け、今年に入ってから案件が急増しており、昨年比で5割増のペースで伸びています。今までは製造業がメインでしたが、サービス、流通・小売も含め業種のかたよりなくアジア進出ニーズが増えているという印象です」(日本総合研究所・徳岡氏)
経済成長を背景に、中間所得者のみならず、低所得者層の生活レベルも確実に底上げされており、マーケットとしてのうまみも右肩上がりに拡大。この膨大な消費層を狙って、今後もありとあらゆる企業が進出に動くのは必至だ。
「その際、中心となるのは、消費大国の中国、インド。加えて最近では、勤勉な国民性で日本企業がビジネスを進めやすいベトナムへの進出例も増えていますね。また、ユニクロをはじめとするアパレルメーカーなどが、製造コストの安いバングラディシュに生産拠点をシフトしています」(徳岡氏)

アジア全体を見据えて戦略を練られる「クロスボーダー人材」が求められる

この流れは、雇用にどのような影響を与えるのだろうか?
「最近多いのは、アジアに生産拠点を構える製造業からの求人依頼です。現地の日本企業を対象とする営業職と、製品のクオリティを守る生産管理や品質管理職が採用の中心ですが、今後は日本企業から、現地企業へと営業対象がシフトしていくため、営業職は現地採用が中心になりそう。一方で、サービス業や小売業などの進出はまだ始まったばかり。現地での事業立ち上げ期を担う営業職や販売職、SVなどの採用がこれから増えていきそうです」(リクルートエージェント・吉岡氏)
「顧客企業の多くはどの業界も、現地での人員確保をイメージし始めています。そのため、日本人に求められるのは、現地スタッフを束ねるリーダーとしての役割と、今までにない販路を見つけ開拓できる事業企画職的な役割です」(徳岡氏)
具体的にはどんなタイプの人が活躍できるのだろうか。
「求められているのは、国境にこだわらない視野を持った『クロスボーダー人材』。今後のアジアでの事業展開では、1つの国にピンポイントで進出したり国ごとに戦略を立てるという考え方は減っていくからです。拠点をシンガポールに置き、生産をベトナムで行い、商品をインドや中国で売る…などとアジア全体を見据えた事業戦略を練ることが必須。そのため、スペシャリスト気質で視野が狭い人、考え方が画一的な人の活躍は難しく、自身のスペシャリティーを軸に人脈を広げ、知見を増やせる人が力を発揮できるでしょう」(徳岡氏)、「現地の語学力は必須ですが、あとは度胸と思い切りも大切。現地では、日本の商習慣は通用せず、即断即決でビジネスを進めなければならない場面も多い。そのときに迷わずとにかく前に進もうとする力は、特に若手ビジネスパーソンには求められます」(吉岡氏)

アジア本格進出を計画中の4社にインタビュー
「当社のアジア戦略と、求める人材像」

アジア展開をにらみ、グローバルに通用するビジネスモデルを築ける人材を幅広く採用

ライフネット生命保険(株) 曽和利光氏

ライフネット生命保険株式会社
総務部長
曽和利光氏

当社は世界でも珍しいインターネット専門の生命保険会社として、2008年に誕生しました。店舗や営業人員が不要で、世界各国に水平展開可能なビジネスモデル。創業時に掲げた「10年後に東アジアで一番輝いている生命保険会社になる」という目標に向け、成長性が高い東アジアへの進出は近い将来に実現したいと考えており、現在「種まき中」です。
海外進出のためには、まずは日本でグローバルに通用するビジネスモデルを確立することが重要。そのために、アジアを中心とした世界各国に出向き、保険事情を調べるとともに、自社のノウハウをあえて公開して興味を持ってくれた現地企業と意見交換し、情報収集。その内容をビジネスモデル作りに活かしています。
現在は、これらの「基盤固め」をともに担える人材を、幅広く採用しています。求める人材像は、語学力に加えて「多様性に対する耐性のある」人。アジアに出れば、文化や生活、考え方の違いに直面するでしょうが、それを楽しみつつコミュニケーションが取れる人を求めます。また、「事実をロジカルに伝えられる能力」も必要。当社のビジネスの仕組みや理念、思想を現地スタッフに的確に伝えられる「伝道師」になってほしいと願っています。

現地メーカーへのアプローチを担える人材を強化。中途採用者から適任を配置する計画

(株)鷺宮製作所 片山雄一氏

株式会社鷺宮製作所
総務部人材開発課 課長
片山雄一氏

当社の主力製品は、家電や自動車、各種プラントなど向けの「自動制御機器」と「試験装置」。海外拠点は中国や欧米などに6拠点あり、グローバルに事業を展開していますが、今後は伸びしろの大きいアジアマーケットにも注力する方針。ローカルメーカーに対するアプローチを積極化することで、業績拡大につなげたいと考えています。
それに伴い、現地の営業職と生産ライン担当者も増やす計画。現在は日本で対象となり得る人を採用し、派遣していますが、今後は現地での採用も増やす方針。こちらから送り出すよりもコストが圧倒的に低いので、ビジネスを拡大すればするほど、現地採用の比率は増やすことになると思います。
とはいえ、現地スタッフのまとめ役は、日本の社員に任せる計画。現在は20人ほどが赴任していますが、アジアでの拠点拡大に伴い、中途採用者の中から適任を送り出したいと考えています。語学力があるのはもちろんですが、それをツールとして使いこなせるだけのビジネス視点、そして現地の文化と思考を理解して現地の人とともに協力し合える人が、海外赴任の対象になりますね。

韓国、台湾のほか今後はその他のアジア各国進出も計画中。人材は現地採用でまかなう方針

(株)エービーシー・マート 佐野浩高氏

株式会社エービーシー・マート
総務部 人事チーム
佐野浩高氏

当社では早くから、アジアマーケットの成長を見据え、店舗展開してきました。2003に韓国に進出し、現在76店舗に拡大中。昨年には台湾にも進出を果たしました。具体的なことは決まっていませんが、中国、ベトナム、タイ、シンガポールなどにも近い将来の出店を検討しています。
韓国、台湾では、現地法人による現地採用でスタッフを確保してきました。今回、初の試みとして、日本での留学生採用に着手。当面は現地採用と留学生採用の二軸でまかなう方針です。ただ、現時点では日本と現地での人材交流は多くはありませんが、将来的には拡大していきたいと思っています。

今後はさらにアジア進出を加速、新規事業立案・立ち上げを担える人材を採用

(株)イトクロ 山木学氏

株式会社イトクロ
代表取締役兼COO
山木学氏

顧客企業の経営戦略上の課題解決のため、Webプロモーション領域を中心に、戦略策定から実行まで一貫して関わっている当社。今後はそのノウハウを急成長中のアジア各国にも横展開させる計画。現在の海外拠点は上海、南京、シンガポールの3カ所ですが、インドネシアに合弁会社を設立準備中。中国・常州、香港、台湾にも進出予定です。
アジア拠点の人材は、9割は現地採用でまかなっていますが、その国に合った新規事業を立案・実行できる「核」となる人材については、今後も国内で継続採用していく予定。具体的には、現地拠点を率いる事業開発マネージャーと、その下で新しいビジネスをインキュベートしていけるスタッフが採用の中心です。「この市場の開拓に関わりたい」という意思を評価し任せる社風があり、実際に1年目の新人が上海支社の立ち上げに抜擢され、新規事業立案から現地での採用、マネジメントまで行っています。
その際に求めるのは、語学力よりも「物事をやり切る力」。現場では、日本の常識では考えられないような突発的事項が多々起こりますが、目標に向かってブレることなく最後までコミットできることが大切だと考えています。

アジアへの可能性が広がる!採用情報

アジア積極進出企業から声がかかるかも?
リクナビNEXTスカウトでチャンスを広げよう!

ゆくゆくはアジアをはじめとする海外が、日本企業のビジネスの主戦場になると考えられています。アジアの現地語がわかる人、アジアに対する見識が広い人は、経験業界・職種にかぎらず、活躍のステージが広がると見られます。
リクナビNEXTスカウトに自分の経験、スキルなどを登録すれば、アジアに活路を見出そうとする企業から声がかかる可能性があります。特に、海外で生活した経験、海外出張経験、中国語や韓国語などアジア各国の語学スキルは企業の目に留まる可能性が高いので、十分にアピールを。自身の可能性を広げるためにも、まだ始めていない方は今すぐ登録しましょう!

スカウトに登録する

EDIT&WRITING
伊藤理子
PHOTO
マツダナオキ/松田康司/内井隆晶/伊藤誠

会員登録がまだの方

会員登録(無料)

会員登録がお済みの方

「今すぐ転職」にも「いつかは転職」にも即・お役立ち!リクナビNEXTの会員限定サービスに今すぐ登録しておこう!

1転職に役立つノウハウ、年収・給与相場、有望業界などの市場動向レポートがメールで届きます

2転職活動をスムーズにする会員限定の便利な機能

・新着求人をメールでお届け

・希望の検索条件を保存

・企業とのやりとりを一元管理など

3匿名レジュメを登録しておくとあなたのスキル・経験を評価した企業からスカウトオファーが届きます

会員登録し、限定サービスを利用する

※このページへのリンクは、原則として自由です。(営利・勧誘目的やフレームつきなどの場合はリンクをお断りすることがあります)