欧米の信用不安、二番底懸念、中国・アジア勢の大躍進…

株安・円高は「雇用と仕事」にどう影響するか?

今年に入り、国内景気がようやく回復基調に転じたものの、ここにきて株安・円高傾向が続き、先行き不透明感が強まっている。果たして株安・円高は、私たちの仕事や雇用情勢にどのような影響を及ぼすのだろうか?株価と為替の動向と、仕事・雇用の相関性を専門家に聞いた。

2010年08月04日

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(株)日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター 所長/山田 久氏

(株)日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター 所長/山田 久氏
87年に住友銀行(元三井住友銀行)に入行し、91年に日本経済研究センター出向。93年に日本総合研究所に入社し、07年より現職。専門はマクロ経済分析、経済政策、労働経済。近著に『デフレ反転の成長戦略「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか』(東洋経済新報社)。

(株)リクルート ワークス研究所 所長/大久保幸夫氏

(株)リクルート ワークス研究所 所長/大久保幸夫氏
人材総合サービス事業部企画室長、地域活性事業部長などを経て99年にワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年より内閣府参与を兼任。専門は人材マネジメント、労働政策、キャリア論。

そもそも、なぜ今「株安・円高」傾向が続いている?

欧米経済不調の影響と、国内市場の縮小傾向で、先行き不安感が高まっている

ユーロ安、ドル安の影響で円高が続く

一般的に株価は、景気に対して3カ月〜半年ほど先行性があると言われている。つまり、今の株安は「日本経済の先行きがあやしい」と示していることになる。
「現在の株安・円高の一番の原因は、欧米景気の先行き不安。ヨーロッパは財政破たん状態にあるギリシャの影響などで、ヨーロッパ全体が経済悪化懸念、通貨危機にさらされています。アメリカも、景気が回復基調にある一方で、失業率は依然高止まりのまま。景気が二番底を打つのではと懸念されています。これらに連動して、欧米経済の影響を強く受ける日本経済も、先行き不安感が強まっている…という図式です」(山田氏)
為替の円高傾向も、「円が強い」から買われているのではなく、「ドルやユーロよりはましだから」という理由から。
「ここから先、今よりも大幅な株安・円高に振れる可能性は少ないでしょうが、欧米経済の好転はすぐには見込めず、今後も株安・円高傾向は続くと見られます。そもそも日本経済は、高齢化社会、人口減少などを受けた国内市場のシュリンクにより、中長期的な成長力が低下傾向にあります。これらを総合的に考えても、株価、為替の先行きについては弱気にならざるを得ないですね」(山田氏)

株安・円高が続くと、私たちの仕事や雇用にどんな影響が出る?

設備投資抑制→雇用も見合わせる恐れ。外資による日本企業買収の動きも高まる

株安・円高は、当然ながら国内景気にマイナス影響を与える。
景気低迷下でも利益を出せる努力をし続けてきた日本企業だが、このままずっと今の株価が続くと、大型の投資案件には慎重にならざるを得ないだろう。消費者のマインドも冷え込み、景気全体が再び停滞する恐れがある。
「株価が下がるということは、国内企業の価値が下がっているということ。上場企業のPBR(株価純資産倍率=企業の資産面から株価の状態を判断する指標)は1.1〜1.2倍と低水準で、解散価値である1倍割れ(企業が解散する場合に現金化される資産の価値より低いこと)に近づいています。つまり、実態以上に売り込まれている企業が多く、『お買い得』な日本企業の買収に動く外資系企業がさらに増えると見られます。今の勤務先が、いきなり外資になる可能性だって否定できません」(大久保氏)

円高は、輸出企業の収益を大きく目減りさせる要因だ。日本は輸出産業が多く、輸出による収益が日本経済を引っ張ってきた。国内市場が減少傾向にある中、経済成長のためには今後も輸出を拡大し続ける必要があるが、このまま円高が続けばその図式も崩れることになる。
アジアを中心とした海外に生産拠点を移し、現地の外国人を雇用する動きや、海外企業を買収して海外展開を加速する企業が増えるでしょう。そうなると、技能者を始め、国内雇用が縮小する恐れがあります」(大久保氏)
ただ、この動きを逆にとらえれば、「海外でのチャンスは今後どんどん広がる」と言えそうだ。
生き残りをかけ、日本企業は本気でグローバル展開に取り組み始めており、『海外で活躍できる人材』の採用は必要不可欠。10年後には、海外進出企業の海外売上比率は現在の30%から50%超に増えると見ており、いち早く海外でのビジネス経験を積んでおけば、転職市場で高く評価されるでしょう」(山田氏)

株安・円高→企業の海外シフトの中で、評価される人材になるには?

海外志向を持ち、チャンスを貪欲につかむこと。自分の専門性を磨く努力も必要

異文化コミュニケーション力を鍛えよう

今の若手ビジネスパーソンは海外志向が弱いというが、「だからこそ、若手の中でグローバル志向を持った人は貴重。それだけで歓迎され、チャンスをつかめる」(大久保氏)という。
加えて、海外で活躍できる人材になるには、異文化間コミュニケーション力を鍛えることが大切という。
「語学力ももちろん大切ですが、異なる考え・価値観の人と積極的に関わり、互いの考えを的確に理解する努力を続けることが何より重要です。たとえ海外ではなく、国内で勝負するにしても、既存マーケットが縮小する中で新しいビジネスの芽を生み出すには、違う業界、違うバックグラウンドの人と臆せずやり取りし、貪欲に情報を収集する努力が必要。何もしなかったら、自分の価値もシュリンクしていくだけです」(山田氏)。
「『変化への対応力』もキーワードですね。これから日本企業はどんどん変化を余儀なくされる。企業の体制や資本、働く環境ががらりと変わっても、動じず仕事を楽しめる力は、これからのビジネスパーソンには必要なスキルです」(大久保氏)

グローバル化の一方で、ブランド戦略や技術力、優秀な人材といった「知的資産」の強化で、他社と差別化を図ろうとする動きも強まると見られる。その流れの中で、重要視されるのは「個人の専門性」。
専門知識を持った人をどれだけ多く抱えているか…が企業の価値につながるため、これからは、今まで以上に専門性が求められるようになるでしょう。この分野ならば負けない!と言い切れる強みを見つけて重点的に経験を積み、自分の軸としてアピールしていくことが必要です」(大久保氏)

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伊藤理子

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