「IT化」「少子高齢化」「グローバル化」でどうなる?

10年後に伸びる有望市場はどれだ?

この激変する時代の中で、10年後を予測するなど無謀かもしれない。断定的に予測をしたところで、その通りにならない可能性のほうが高いだろう。とはいえ、今わかっている事実を組み合わせることで見えてくるものもある。たとえ先行きが不透明であっても、少しでも予測ができれば未来に対する備えができ、不安を和らげることにつながるかもしれない。そこで今回は3人のプロに、目の前にある事実をもとにした「10年後の有望市場」を大胆に予測してもらった。

2012年10月17日

<ADVISER>

アイティメディア株式会社 ITmedia ニュース 編集長 小林伸也氏

アイティメディア株式会社
ITmedia ニュース 編集長 小林伸也氏

1973年群馬県生まれ。1995年早稲田大学卒業、同年から北海道新聞記者として地方取材、紙面整理を担当。その後、NHK記者、ITニュースサイト記者を経て、2000年、ソフトバンク・ジーディーネット(現アイティメディア)に入社。2008年から現職。

有限会社アリア 代表取締役 松本すみ子氏

有限会社アリア
代表取締役 松本すみ子氏

IT企業を経て2000年に独立。シニアライフアドバイザーの資格を活かし、シニア世代にライフスタイルの提案や情報提供を行う。団塊世代の動向研究や企業向けコンサルティング、調査研究受託などを行うほか、情報サイトなどでシニアマーケットにまつわる連載を担当。講演、セミナー、執筆なども多い。

株式会社TNC マーケティングプラナー、エディター 村上千砂氏

株式会社TNC
マーケティングプラナー、エディター
村上千砂氏

60カ国80地域に在住する400人の日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」をはじめ、海外市場のマーケティングについて豊富な知識を持つ。昨年タイ・バンコクに拠点を設立。バンコクと東京の両拠点で活躍中。

【ITのプロに聞く】IT化がもたらす注目の市場とは?

お金のスマート化

電子マネーがすでに普及していますが、今後はさらにお金そのものをスマートフォンと組み合わせることで利便性を上げる「スマートマネー」ともいうべき市場が盛り上がるのではないかと予測しています。
そもそもお金というものはバーチャルなものですから、電子化との相性はいいはず。1000円があの形の紙であることに全く意味はありませんよね。だから、電子マネーのようにスマートフォンにお金を入れられるようにしておき、ボタンを押せばすべての支払いが「簡単に」「誰とでも」やりとり可能な仕組みになるのは、決して特別なことではないはずです。
技術的にも、NFC(近距離無線通信)がスマホに標準搭載されれば簡単に実現可能です。あらゆるクーポン券やポイントカードもすべて一括管理できれば、お金を使うことの利便性は著しく向上し、結果、新たな複合サービスが多々生まれるでしょう。特に、マーケティング手法は大きく変わるかもしれません。
また、個人商店や中小規模のお店に向けた導入支援サービスなどは当然立ち上がるでしょう。SNSと組み合わせることで、スマートフォン一つでご用聞きから配達手配、決算までを行うといった、新たな商売の仕方も生まれるかもしれません。

ネットとリアルを組み合わせた新サービス

ネットとリアルの関係が、どんどん変わっています。これまでは、「ネット証券」や「ネットお見合い」といったふうに、“リアルのネット化”が中心でした。しかし、Facebookに代表される“リアルな関係がネットに実装される”サービスや、「O2O(Online to Offline)」と言われるような、例えばSNS上でクーポンを配布して実店舗に足を運んでもらうといったマーケティングが普及。これはひとえに、スマートフォンが爆発的に普及し、誰もがいつどこにいてもインターネットに常時接続できる環境を手に入れたことに尽きます。こうした状況下での、ネットとリアルの関係をうまく駆使したサービスが、今後はいろいろと生み出されていくと考えられます。例えば、GPSを活用して近くのお店のお得な情報やサービスが随時配信されるとか、ネット上に集まったあらゆる口コミの蓄積から商品やサービスが検索できるようになる…といった可能性が考えられそうです。こうした環境の変化は、ブロードバンドの利用開始や、PC普及時と同じくらいのインパクトを秘めています。変わり目だからこそ、企画力で勝負しやすくなるはずです。

“なりすまし不可”で実現可能となる「ネット選挙」

2015年より導入予定の納税者番号制(マイナンバー)が大きなターニングポイントになるかもしれません。というのも、個人証明がこれまで以上に簡単で、かつ間違いにくくなると言われているからです。これをITの世界に導入することで、個人証明の部分が障害になっていたあらゆるアナログなサービスが、より安全にIT化できると期待されています。
例えば「ネット選挙」が考えられます。オンライン上で簡単に投票できるようになれば、もしかしたら選挙制度そのものが大きく変わるかもしれません。訴訟なども、わざわざ法廷に足を運ばなくてよくなり、これまで以上にスピーディーに行えるかもしれません。今まで想像もつかなかった意外なものがITと組み合わされ、新しいサービスやビジネスに成長する可能性は十分にあるので、例えばオンライン上で参加できる「ネット結婚式」「ネット葬式」というのも、考えられる話でしょう。

【シニアビジネスのプロに聞く】少子高齢化がもたらす注目市場とは?

高齢者向けのマッチングビジネス

総務省調べでは、2012年現在の全人口のうちで高齢者の占める割合は約24%。すでに日本は「超高齢社会」なのです。2025年には、65歳以上の人口が32%を超えると予測されています。しかし、70歳くらいまでは肉体的にもまだまだ若く、活動的。若年層に比べると時間にもお金にも余裕があり、社会に対して問いたいこともあれば、人の役に立てる機会を欲しています。インターネットを使って買い物をするのも珍しいことではありません。つまり、「ボタンが少ない携帯電話」に象徴されるような“お年寄り”のイメージとは、かなりかけ離れているのです。そうしたイメージを取り払うことが、今後の高齢者向けの成長ビジネスを考えるヒントになります。
まず、確実に伸びると考えられているのが、彼らが求めていることを実現するための「マッチングビジネス」です。“今日行くところ”と“今日やること”を求めている彼らには、「活躍できる場やサービスの提供」が必要です。落ち着いた雰囲気で仲間と集まれる飲食店や、生きがい起業をサポートするサービス、楽器などの若いころの趣味を楽しみたい人向けのライブハウスなどもいいでしょう。すでに、セミナー講師を探している自治体や学校などと、自らの経験や趣味・特技を誰かに伝えたいと意気込む高齢者をマッチングさせるビジネスが生まれています。

「シェアハウス」と「リノベーション」による住宅再生

国立社会保障・人口問題研究所によれば、2015年には高齢世帯の7割が単身または夫婦のみの世帯になります。子どもや家族に迷惑をかけたくないということと、人生の終焉に向けてシンプルな生活を好むため、「断捨離」への関心も高くなっています。思い出のある品物や家具などを単に売ったり、捨てたりするのではなく、納得いく形で処分・活用したいと望んでいます。「家」も同じです。核家族化、少子化が進む中で、昔のように子どもたちは家に戻ってくることはなくなりました。その結果、残される家をどうするか。空き家は今や社会問題化しています。そこで注目されるのが、「シェアハウス」そして「リノベーション」だと考えられます。
古民家ならではの味を活かして、若者でも住みやすいようなおしゃれな家にリノベーション。そうすれば、多少は形を変えたとしても家は残せますし、将来的にも有効活用が期待できます。若年層の収入・消費は今後も右肩上がりは望めないため、「安く」「シェアする」というニーズは高まるでしょう。すでに、不動産業界を中心に注目を集める専門会社が出始めています。今後は、高齢者向けのシェアハウスも提供されるのではないでしょうか。

高齢者向けファッショングッズ

今、消費を牽引しているのは高齢者なのです。特に団塊の世代は、ビートルズやジーンズという文化で育ち、豊かな消費生活を経験してきた人たちですから、消費者としての目は肥えています。彼らが高齢者になっても、そうした特徴は発揮されるでしょう。
実は、彼らのニーズは高いのに、提供者がそれに気づいていない分野が多いと私は思っています。例えば、「遠近両用コンタクトレンズ」などもその一つです。現在65歳前後の団塊の世代が20代のころには、コンタクトレンズはすでに多く使われていました。しかし、老眼になるタイミングでコンタクトではなく眼鏡(老眼鏡)を使い始めてしまいます。遠近両用コンタクトレンズがあることさえ知らない人もたくさんいます。一方、せめて外出するときやおしゃれしたいときには、老眼鏡は使いたくないと思っている人も多いのです。もしも、遠近両用コンタクトレンズが今よりも使いやすくなり、皆がその使い良さを知れば、利用者は格段に増えるでしょう。その後の世代も必ず老眼になっていくのですから、市場としてのポテンシャルはとても大きいと考えます。
「老眼には眼鏡」「高齢者はヒールの靴など履くわけがないから、コンフォートシューズ」などの固定観念を外し、彼らが若いころに何をしていたか、今、何を欲しているかを真摯に受けとめたところに、新たなビジネスチャンスが潜んでいると思いますよ。 

【海外マーケティングのプロに聞く】グローバル化がもたらす注目市場とは?

食習慣の変化に対応する「食のプロフェッショナル」

日本からの進出先として今後しばらくは注目されるであろう東南アジア。各国ともに経済発展が進む中で、実は食事において大きな変化が起こっています。「食べられればいい」から「おいしければいい」になり、ここ最近は「健康によければいい」という意識の高まりです。こうした健康志向を背景に進むのが「内食の普及」。特にタイでは、最近まで食事は市場で食べるのが当たり前でした。家で食事を作る習慣がなかったのですが、「健康のために自宅で料理しよう」と考える人が増えています。
すでに多くの日本企業が進出し、ヘルシーな日本食は広く普及し始めています。世界中で日本食は人気ですから、海外向けの料理関連ビジネスや調理に関わる事業、システムキッチンや調理用品などの分野は今後注目が集まると予測できます。 

日本ならではの高い質が活かされる教育産業

日本企業の海外進出は今後、よりクオリティの高い「ホンモノ」が注目されるようになります。世界中で高く評価される日本特有の「おもてなし」の文化、きめ細かい仕事の仕方を、現地でどう再現していくかということです。現在タイには、製造業やサービス業を中心に3133社が日本から進出していますが(2011年10月末時点/帝国データバンク調べ)、提供されるサービスの質は決して高いとはいえません。現地法人を立ち上げる際は、日本人社員一人あたりに対して一定数以上の現地人を雇用することが義務づけられています。よって、クオリティを維持するには、現地人スタッフに対する「教育」の問題は避けて通れません。しかし現状では、現地での教育支援企業が充実しているとはとてもいえない状況です。
日本人によるレベルの高い人材教育は、進出した日本企業のみならず、多くの企業に受け入れられると思います。専門性の高い「人」の需要は高く、この分野はまだまだこれから。企業の進出が一段落すると、次は「人の輸出」ではないでしょうか。先述した食のプロはもちろん、心のケアができるカウンセラーや、生活全般をアドバイスできるライフアドバイザーなど、経済発展に伴う、あらゆる歪みを解消する仕事は、今の日本と同様に求められるはずです。 

視点を未来に移すことで、有望市場が見えてくる

今回は、「IT化」「少子高齢化」「グローバル化」という3つのキーワードから、10年後に有望市場となりうるビジネスについて考察してみた。3人の識者に挙げてもらったキーワードの中には、すでに芽が出始めているものもあるだろう。大切なのは、現状をよく見たうえで10年先のわれわれの姿を具体的にイメージし、必要と思われるものを見い出すこと。起こることのすべては、起こるべくして起こる。想像力を働かせて次の動きを見据えながら、転職先だけでなく、日々の仕事における企画やビジネスモデルについても考えてみてはどうだろうか。

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EDIT&WRITING
志村 江
PHOTO
武島 亨

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